経営コンサルタントコラム 2012年10月分

再生局面では手形に注意(4)-2012年10月29日号

◆手形を受け取った場合の注意点

これまで3回に渡って手形を「振出した」場合の注意点をお話してきました。

今回は手形を受け取ったときの注意点について述べていきたいと思います。

 

さて、手形を受け取るとはどういうことでしょうか。

手形を振出す効果が「支払の先延ばし」でしたから、手形を受け取る影響はというと、

現金の回収が先延ばしにされることですね。

 

手形は会社の信用に基づいて振り出されるものでした。

手形を受け取るということは、現金回収ができないリスクも受け取ることになります。

ですので、手形を受け取る前に、手形で支払ってもらってもちゃんと回収できるのか、

貸倒れにならないか、相手の会社の状況をよく見極めなければなりません。

既に手形での取引がある会社は、先方の信用状況について財務諸表をいただくなどして、

定期的にチェックする必要があります。

問題があれば、手形から掛け、現金での取引に変更する等、貸倒れ対策を検討していか

なければなりません。

 

逆の立場で考えると、手形決済から現金取引に変えて欲しい、などと取引先から提案を

受けた場合は、自分の会社の信用情報が悪化している、そういう噂が流れている、

と思って間違いないでしょう。

 

◆資金繰り管理ができていないと。。(1)

手形を受け取ると現金の回収が先延ばしにされる(120日後が多い)ので、支払資金は、

その売上では“瞬間的に”賄えない、ということが起こります。

 

例えば、

11月1日 請負契約締結(請負金額5000万円、手付金1000万円現金)

11月1日 材料仕入(1000万円、末締め翌末払:12月末)

11月5日 外注依頼(3000万円、末締め翌々末払:1月末)

12月1日 納品、代金受取り(手形、支払期日3月末)

と、こんな取引があったとします。

 

手付金1000万円を現金でいただいているので、12月末の仕入代金支払いは可能ですね。

次の支払は1月末の外注費3000万円です。

さて、この支払はどうしましょう。

この売上に関する支払は受けていますが、手形です。

そのため、キャッシュが入ってくるのは120日後の3月末です。

 

困りました。外注費を支払うための現金キャッシュがありません。

手付金は仕入の支払に使ってしまってありません。

このままでは外注先に迷惑をかけてしまいますし、自社の信用問題になります。

 

◆資金管理ができていないと。。(2)

このようなことが支払日の直前にわかったとしましょう。

銀行の融資は相談してから早くても2週間、普通1カ月程度はかかります。

運転資金の調達は間に合いません。困りました。

 

外注先に行って支払期日の延期をお願いしますか?

お金をかき集めてきてなんとか払いますか?集められる金額ですか?

直前になって青ざめても遅いのです。

 

会社はキャッシュ(現金)がなくなれば倒産しますので、

資金の枯渇はどうやっても避けなければなりません。

ついては「いつ、いくら必要なのか」を把握する、資金繰り管理が重要になってきます。

 

資金繰り管理をする中で、キャッシュが不足するタイミングが早めに見極められれば、

慌てることはありません。

銀行から運転資金の融資を受け賄うことも可能でしょうし、手形を振出したり、

掛のサイトを調整したり、場合によっては手形を割引いたり、裏書したりして、

キャッシュの「入」と「出」を合わせていくことが可能となります。

 

キャッシュが「いつ入ってきて、いつ出ていくのか」を把握することは経営上マストです。

資金繰り管理をしっかり行って、不要な倒産を防ぎましょう。

 

池田

再生局面では手形に注意(3)-2012年10月22日号

◆手形を振り出す場合の注意点

手形は現実の支払を「先延ばし」するものです。

手形記載の金額はその期日に支払うことになります。

つまり、手形取引であれば取引時点で手もとに現金が無くても商売ができるわけです。

 

うまく使えば、いい道具です。しかし、管理を怠るとまずい結果をもたらします。

なぜなら支払期日前日までに資金を用意できないと不渡りになるからです。

6か月以内に2回の不渡りを出すと倒産、ということになるのは以前お話した通りです。

ですので、1回目の不渡りでは銀行取引停止にはなりません。「不渡報告」が銀行に通知されるだけです。

また、1回目の不渡りから6か月以内に2回目の不渡りを起こさなければ、不渡りは「無かったこと」になります。

 

というとそんなに心配するようなことではない気もしますが、これがそうでもないのです。

なぜかというと、支払期日は月に1回でないこともあるからです。

 

5日にA会社へ振出している手形の支払期日があり、10日にB会社へ振出している手形の支払期日があるような場合、5日に不渡りを出し、10日の支払に資金が間に合わないと、6か月以内に2回目の不渡り、ということになります。

5日に資金が足りないところ、その5日後の10日に資金を用意することは容易ではありません。

 

◆不渡りを防ぐポイント

そもそも手形を振り出して支払う理由は、以下のようなところでした。

①手もとに現金資金が無い

②支払うに足りる現金資金が無い

③手もと資金を減らせない

 

要するにお金がない(足りない)わけですね。

ですので、次の決済日まで時間が無いと、資金を準備するのは大変困難になります。

 

当り前ですが、資金を準備できれば不渡りは起こりません。

ただ、準備する(不渡りを回避する)にしてもいろいろとやることがあり、時間が必要です。

そのためにも「いつ」「いくら」足りなくなる、ということをできるかぎり早く把握しておくことが重要になります。

言い換えれば資金管理、資金繰りをきちんとする、把握することが不渡りを防ぐ、倒産を防ぐポイントになります。

 

◆資金繰り管理の重要性

利益は出ているのに支払日当日に決済資金が調わず、不渡りを出し倒産となった場合、これをいわゆる「黒字倒産」といいます。

 

会社は赤字でも潰れませんが、キャッシュ(現預金)が無くなると即潰れるという意味がわかりますね。

ですので、手形を振出している会社はよくよく注意して管理をしなければなりません。

できれば資金繰りの管理を日々で追っておく(日繰りともいいます)ことをお勧めします。そうすれば、何日にいくら資金が必要で、いくら入金予定があって、そのときの資金がいくらでいくら足りないか、把握できますからね。

 

手形決済資金が足りなくても不渡りにしない方法はいくつかあります。ただそれも決済日直前に資金不足が判明したのでは打つ手がありません。時間切れです。

早めに分かれば、その分不渡りを回避する策を練り、打つことができます。

 

会社はキャッシュ(現預金)が無くなると倒産します。

倒産を防ぐために会社が先ず、しなければならないことは現金、資金の確保です。

そのためにも、支払を先延ばしできる手形は、有効な道具となります。

ただし、その用法には十分な注意が必要です。

資金繰りをきちんと把握して、キャッシュ不足を回避しましょう。

 

池田

 

再生局面では手形に注意(2)-2012年10月16日号

◆手形を振り出す、受け取る意味

 

さて、手形を振り出す、手形で支払うのはなぜか、というところをおさらいすると、現金の支払を先延ばしにできる、期限の利益を得るため、でした。

 

現金の流出を一時的に避けられるわけですから、キャッシュフローの調整弁としては有用です。ただ、支払を先延ばしにするわけですから、手形を振り出すため には、振り出す会社が将来(支払期日に)ちゃんと支払ってくれることが担保される、いいかえれば会社の信用力が必要になります。なので、設立したばかりの 会社など信用力が十分でない会社は当座を開けられず、手形も振り出せないことになります。

 

逆に、手形を受け取った側からすると、すでに商品を販売したり、サービスを提供しているにもかかわらず、すぐにお金が貰えないわけですから、仕入代金等の 支払原資がありません。そのため、仕入先などへの支払について、融資を受けて賄ったり(いわゆる運転資金になりますね)、自らも手形を振出して支払った り、はたまた受け取った手形を割引して現金化したりして掛かった費用を支払うことになります。

 

勘定科目ですと、手形を受け取れば受取手形、振り出せば支払手形という形で表わされます。

 

 

◆手形が不渡りになると。。

 

前回お話しした通り、手形は6か月以内に2度不渡りを出すと銀行取引停止となります。一般的にこれを倒産といいます。倒産となると、会社の信用状況が著し く悪化します。また、当然に手形の振出しはできなくなります(手形は会社の信用に基づいていますので仕方ないですね)。

手形の振出しができなくなると、取引は現金決済のみになりますから、手もと資金に相当な余裕がないと商売を続けていくのが難しくなります。

そもそも不渡りを出す、ということは決済資金が用意できなかったということですから、そのような状況で手もと資金が潤沢なわけがありません。ついては事業 として続けていくことが困難になり、事業停止状態に陥ります。また、金融借入等については、契約上の期限の利益喪失事由に当てはまり、一括弁済を迫られる ことになります。

 

たとえ翌日に入金予定があったとしても、その時(決済日)に資金の用意ができなければ、不渡りになり、上記のようなことが現実となるわけですから、かなりシビアーな問題なのはわかりますね。

 

買掛金の支払が少々遅れても、これほどの問題にはなりません(噂では「あそこ資金繰りキツイらしいよ」等広がるかもしれませんが)。手形がコワイのは、一瞬にして上記のような状況になるところです。

 

今回はここまで。

次回は具体的な注意点、振り出したり割引いたりしている場合にすべきこと、についてお話します。

 

池田

再生局面では手形に注意(1)-2012年10月9日号

企業再生、事業再生の局面では、手形の取扱いに非常に注意しなければなりません。

資金繰りイコール手形決済資金の確保と言ってもいいくらい、特に再生初期については、その取扱いは重要になります。

 

なぜ注意しなければいけないかというと、不渡り(支払期日に支払分の資金を用意できないこと)が6か月以内に2度発生すると、銀行取引停止という事態を招くからです。

銀行取引停止がなぜ「まずい」かというと、まず手形の振出しができなくなり、また、事実上の倒産とされ、信用の著しい悪化を招くからです。

 

ここで一旦、手形の基本的な事項についておさらいします。

手形についてはよくわかっている、という方は読み飛ばしてください。

 

まず手形とは何か?といったら、これは有価証券の一種、ということになります。

 

手形は為替手形、約束手形の2種類からなりますが、為替手形は現代の国内商取引においてはほとんど使われていません。ただし貿易に関する取引には用いられ ています。その内容は、振出人が支払人に委託し、受取人にその金額を支払ってもらうものです。為手(ためて)と略されて呼ばれます。効果として現金を直接 送付するリスク(紛失や盗難)を減じます。

 

約束手形は振出人が受取人に対してその金額を支払うことを約束する有価証券です。略称は約手(やくて)。その用途として商業手形、手形貸付、融通手形などがあります。

 

商業手形は手もと現金が無い場合に振り出して支払いに充てます。「掛け」よりも回収可能性が高まるため用いられます。当然代金支払いの先延ばしの効果があります。これを受け取れば「受取手形」、振り出せば「支払手形」となります。

 

手形貸付は借入金弁済を手形により行うものです。各返済期日を支払期日とする手形を振出すことになります。貸付金の未回収リスクを低減させる効果があります。

 

融通手形は、商取引の介在しない手形です。手形を振り出せる人がお金に困っている人などを受取人として振出し、受取人は手形割引などで現金化します。振出人複数で手形を振出し合いし割引等で現金化する交換手形なども融通手形のひとつです。

 

手形を発行するには、銀行と当座勘定取引契約を結んで当座預金口座を開いてもらわねばなりません。契約にいたるには信用等の調査がありますので、誰でも作 れるというわけではありません。当座が開ければ、手形用紙を銀行から購入し、それを使って手形を振り出すことになります。

 

おさらいが長くなってしまいましたが、とりあえず今回はここまで。

次回より再生局面で手形の取扱いがなぜ重要なのかについて詳細をお話いたします。

 

池田

 

欠損金繰越期間伸長の意味(4)-2012年10月1日号

◆再生局面における繰越欠損金活用の意味と効果(その2)

 

これまで欠損金を繰り越せる期間は7年間でした。

欠損金を使い切れてなくても、8年目以降は普通に税金を払うわけです。

 

これが9年になったということは、2年分得した、ということです。

前回の計算でいうと2年で960万円!すごいですね。

 

ただし、繰り越せる限度は欠損金の額分(1億円)ですから、

8年間でトータル9600万円(1200万円×8年)損金として使ったとすれば、

9年目に損金算入できる額は、

 

欠損金額1億円-既に損金算入した額の総額9600万円の400万円になります。

 

なので、

9年目については利益1200万円-欠損金残額400万円の800万円に法人税率40%を掛けた320万円、税負担が生じることになりますね。

 

単純計算でいうと2年で960万円得した感じがしますが、

細かくいうと、A社さんの場合は2年で640万円得した、という計算になります。

 

9年とは言わず、1、2年で欠損金を使い切るほど復活できるのであれば、それはそれでとても良いことですし、そういう再生・回復ができるのであればそれがベストです。

しかし、確実な計画を立てるという点で、あまりにもハッピー過ぎる、実現可能性に乏しい計画は信用度に欠け、銀行など債権者の方に対して不誠実なものとなってしまいます。

 

一般的に中小企業の再生計画は10年間での債務完済を目指します(なぜ10年かという点についてはいろいろあるのですが、ここでは割愛します)。

言い換えれば、10年間で完済できる、かつ、実現確度の高い計画が立てられれば再生計画として問題ない、ということになります。

 

A社さんを例にして簡単に弁済計画を考えてみます。

 

利益が1200万円出ていることから逆算して(経常利益率を3%と仮定)、

売上高を4億円、金融債務が売上高の半分として2億円と仮定します。

 

この2億円を10年で完済できればいいわけですから、

まず年間利益から1000万円を返済に充て、10年間で1億円。

減価償却費が年間1000万円あったとして、これを返済にあてれば10年で1億円。

これで計2億円の返済ができます。

 

売上が伸びず、現状維持であったとしても債務を完済できるわけです。

 

では、欠損金を損金算入できなかった場合はどうかというと、

税引き後の利益は、

税引き前利益1200万円×(1-税率40%)=720万円なので、

これを全て返済に充てたとして10年間で7200万円の返済。

 

法人税がない場合は10年間で1億円返済できましたが、それと比べ2800万円足りませんね。

ということはこの足らずの2800万円をどこかで捻出しなければならないことになります。それはコストの削減であったり、売上の増加であったりするわけです。言い換えれば、再生計画がより厳しいものとなるわけです。

 

欠損金を繰り越せれば税負担が減り、その期間が伸長されればよりその効果が活用できることについてご理解いただけましたでしょうか。

 

債務の返済を進めるためには税負担が軽いに越したことはありません。

負担が軽ければ再生計画も立てやすくなります。

再生計画策定の際は欠損金の効果も忘れず盛り込みましょう。

 

池田

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