経営コンサルタントコラム 2013年2月分

倒産回避から再成長へ-2013年2月24日号

まず、倒産とは何か、ということから。

意外とちゃんと知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

企業情報を扱う東京商工リサーチ(TSR)さんが使い始めた言葉だそうです。

倒産開祖のTSRさんによれば、

『「倒産」とは、企業が債務の支払不能に陥ったり、通常の経済活動を続けることが困難になった状態を指す。「法的倒産」と「私的倒産」の2つに大別 され、「法的倒産」では再建型の「会社更生法」と「民事再生法」、清算型の「破産」と「特別清算」に4分類される。「私的倒産」は、「銀行取引停止」と 「内整理」に分けられる。云々。』

 

民事再生などは「再生」ですから、倒産と呼ぶのもちょっとどうかなとも思いますが、債権者の側から見れば、債権が毀損すること間違いなしということで倒産なのでしょう。

内整理は私的整理と同義語とのことですが、債務について債権者と交渉したりする段階では倒産とは呼ばず、事業停止や清算手続きが確認できた場合のみ倒産と呼ぶようです。そりゃそうですよね、債権者交渉しただけで倒産と呼ばれては厳しいものがあります。

もうひとつ、銀行取引停止、という用語があります。以前手形についてお話ししたときにも出てきた言葉ですね。振り出した手形が半年以内に2回飛ぶ(決済できない)と銀行取引停止です。利益が出ていようと何しようと半年2回飛ばしでアウト、倒産の速報が流れます。

 

法的なものは自分で申し立てなければならないので、回避も何もあったものじゃありませんよね。整理はこれまた自分の意思でするものなので、回避すべきは銀行取引停止です。

 

銀行取引停止になるということは、手形決済ができない状態(イコール資金繰り困難)なということですから、決済できない状態を回避することが倒産回 避ですね。つまり、手形決済日に資金が足らないことがないようにする、資金繰りが回るようにすることが倒産回避、ということになります。

 

資金繰りが回ればいいわけですから、何がしかの資金が追加されるのが一番手っ取り早い解決方法です。いわゆるニュー・マネーですね。この種類としては借入れ、出資、借入+出資などの方法があります。

 

しかし、資金繰りが厳しくて倒産しかかっている(あるいは倒産している)会社にお金を貸してくれるところは少ないですし、出資などはより難しい話で す。「入れる」お金は見込めないので、「出る」お金を少なくして資金繰りを合わせるほかしようがありません。「出る」お金とは、事業費用や返済金ですね。 とはいえ、仕入額を少なくする、まけてもらうといってもたかが知れています。そもそもそういうコストダウンはすでに行われている事が多いのでこの局面では あまり有用な方法ではありません。また、いまいまの現金流出を抑える必要があるので、返済金の支払い猶予や買掛金の支払い期限延長、手形のジャンプ、給与 の支払い遅延などで急場をしのぎ、現金の「入」の方が「出」よりも多い形を作る。これが倒産回避です。

 

一旦倒産を回避し、資金繰りが落ち着くと倒産の問題が終わったかのように感じます。

しかし、当座の危機を回避しただけで、原因は何も改善されていないのですね。したがって、一時的に立ち直ったかのように見えても、またいずれ問題が 再発します。根本原因を改善する気持ちがなければ、同様に倒産回避に走りまわり、ひと落ち着きする。この繰り返しとなります。これはきびしい。いつまで たっても枕を高くして寝れません。

 

つまり、「再生」していないのです。

 

とりあえず、すぐには潰れないようにできた。これから本格的に再生のステップを踏んでいくぞ、という話なのですね。

 

倒産回避で再生できた、でなく、倒産回避は再生の第一歩。

資金繰りが落ち着いたら、本格的な再生へ前進していきましょう!

 

池田

会社分割で債務逃れはできない-2013年2月18日号

インターネットを検索すると、いまだに会社分割で再生、などと言っている方がいるようですが、既に最高裁判例が出ている通り、債務逃れの新設分割は詐害行為取消の対象となります。新設分割自体が取消されてしまうわけですから、今現在では原則意味の無いものです。

 

債権者の同意を得た上で行えばそれでも使えるスキームではありますが、巷でいうところの「会社分割による再生!」は、負債(借入金)は元の会社に残 して、事業を新しい会社に移転させ、債務の無い、あるいは軽い状況で事業を継続する、債務逃れ目的の、債務者に都合のよいものです。債務逃れ目的だから詐 害行為取消の対象だよ、と裁判所が決めたので、このような目的にはもう使えない手法です。

 

使えない、ということでさらに言うと、今の時代、すでに会社分割だけでは再生できない事態になっています。

会社分割による再生の条件は、営業利益が出ている、もしくは、ちょっとコストダウンをすればすぐに利益が出ることです。事業は回っているので、とりあえず債務さえなんとかすれば再生できる、一昔前のバブル型破綻・再生のパターンに会社分割は有効な手法です。

しかし、今はその営業利益が出ていない。事業を切り分けても営業利益が出ていないから新しく分割した会社も赤字になって潰れてしまう。つまり、意味が無いわけです。

 

弁護士さん向けの再生マニュアル本で営業利益が赤字の場合は再生の見込みがないので破産に移行、と書いてあるのを見たことがあります。そう単純じゃ ないだろう、と思います(営業利益が出ていない中身とその理由次第では再生可能)が、営業利益が出ていないとは、つまりそういう意味なのです。

 

会社分割による再生スキームが判決で使えなくなった云々はありますが、実際のところはもうすでに斯様な外科手術的再生スキームは通用しないのですね。どちらかといえば、生活習慣病を治すような地道な治療(改善)が必要とされています。

 

例えば糖尿病の方がいらっしゃるとして、食生活の改善は勿論、定期的な運動や、はたまたそれを継続するための意識改革までしなければなりません。ど こかを切除すれば良くなる、というものではないわけです。どうしてそうなったのか?という根っこの部分にフォーカスをして、それを改善しなければ悪化の一 途をたどります。ある意味面倒くさい病気なのですね。

 

会社も同じです。キャッシュフローの改善をし、無駄なコストを省き、経営体質を強化する再生プランを練り、それを実行できる能力や、意識を高める。 窮境に陥った原因を突き詰め、それを改善し、再発を防ぐ。新たな収益源の種を蒔き、育て、収穫する。これはとても地味で、しかも長い道のりです。しかし、 それに狼狽えているようでは結局のところ再生はしません。安易な方向、方向に走っていき、結局会社を潰します。もしかしたらそれが会社を窮境に陥らせた原 因かもしれません。

 

窮地に陥った経営者の方はとかく、目に優しい、「これなら確実に再生できる!」とか「これを使えば絶対再生できる!」など甘い言葉に弱いものです。 精神的に参っている部分もあるでしょうから、いたしかたない面もありますが、確実で絶対的な方法などありません。もしそのような方法があれば潰れる会社は 世の中にひとつもないでしょう。会社分割での再生もそのような甘い戯言のひとつとなりました。

 

法律の抜け穴を使った債務逃れの再生手法(本当の意味で再生ではありませんが)は、バブル崩壊直後はいざしらず、今はもうありません。債権者が本気で対抗してきたら必ず負けます。

 

再生に詭道なし。

 

問題から逃げることはできません。

真正面からぶつかって突破するのみです。

 

池田

損益分岐点の計算方法と意味-2013年2月8日号

損益分岐点、という言葉を知らない経営者の方はいらっしゃらないと思いますが、どのように計算するのかについて案外と知らない方も多いようなので、今回は損益分岐点(売上高)の計算方法についてお話します。

ほぼ算数、数学の復習ですが、考え方も含めおさらいしておきましょう。

 

損益分岐点(売上高)は売上と費用の額が同額で損益トントンになる売上高です。

売上が損益分岐点を下回れば、損失が発生している、ということになります。

 

■損益分岐点(売上高)の計算式

さて、損益分岐点売上高は、固定費を限界利益率で割って算出します。

算式はこのようになります。

 

損益分岐点売上高=固定費/(1-変動費/売上高)

 

変動費とは売上の増減に応じて名前のとおり変動する費用、固定費とは増減しない費用です。

変動費の代表的なものは材料費や外注費、販売手数料や運賃などですね。

固定費はというと、人件費、労務費や家賃などです。

業態によって何を変動とするか固定とするかはまちまちですので、それぞれの事情に応じて区分けをしてください。基本は売上に比例するかというところです。

 

ここで、(1-変動費/売上高)がなぜ限界利益率かというところを少々。

限界利益は売上高から変動費を引いたものです。

 

限界利益=売上高-変動費

 

売上高-変動費は、言い換えれば固定費+利益(利益がある場合)ですね。

なので、限界利益が大きいイコール固定費+利益が多いともいえます。

さて、これを売上高で割ったものが限界利益率ですから、計算式はこうなりますね。

 

限界利益率=(売上高-変動費)/売上高

 

(売上高-変動費)/売上高を計算するには、(売上高/売上高)-(変動費/売上高)としますので、(売上高/売上高)は1と略せますね、同額ですから。

とすると、1-(変動費/売上高)。

 

なので、限界利益率は、

 

限界利益率=1-(変動費/売上高)

 

■限界利益率とは

限界利益率は、一般的に数値が高い方が利益を生みやすい体質であるといえます。

ただ、限界利益率を高めるためには変動費を低く抑える必要があります。

例えば、

 

売上高1億円

変動費6千万円

固定費4千万円

 

であるとすると、

限界利益率は1-(6千万円/1億円)で0.4(40%)です。

限界利益率を高めるために変動費を低くして固定費に付け替えると、

 

売上高1億円

変動費4千万円

固定費6千万円

 

限界利益率は1-(4千万円/1億円)で0.6(60%)になります。

指標は40%→60%と20%改善されましたが、固定費がその分膨らんでいます。

固定費の増加は経営の柔軟性が損なわれることに繋がります。指標“だけ”にフォーカスしないよう注意してください。

 

■損益分岐点の試算

話を戻して、この限界利益率で固定費を割ったものが損益分岐点売上高なので、先ほどの算式となります。

長い式にすると、

 

損益分岐点売上高=固定費÷{(売上高-変動費)÷売上高}

 

言葉にすると、売上高から変動費を引いたものを売上高で割ったもので固定費を割る、となります。

 

試しに計算してみましょう。

 

A社の損益状況:

売上高1億円

変動費6千万円

固定費4千万円

 

計算式は、

 

損益分岐点売上高=固定費4千万円/(1-変動費6千万円/売上高1億円)

 

計算をすすめると、

 

損益分岐点売上高=固定費4千万円/(1-0.6)

=固定費4千万円/0.4

=10000万円

=1億円

 

なので、損益分岐点売上高は1億円。

はい、上にもどって利益額を見るとゼロ0になっています。間違いないですね。

よって1億円が、A社さんの変動費および固定費が回収される収支均衡売上高となります。

つまり、売上高が1億円を下回ると赤字になります。

 

■損益分岐点売上高比率

損益分岐点(売上高)を売上高で割ると、損益分岐点売上高比率が出ます。

 

損益分岐点売上高比率(%)=損益分岐点売上高/実際の売上高×100

 

利益を出すためにはこの比率が100%を下回っていないといけないわけですが、言い換えれば、100%を下回っていればいるほど経営体力がある、と言えることになります。

 

損益分岐点売上高は他社比較ができない、しづらいものですが、損益分岐点売上高比率については割合なので、他社比較ができます。

この指標なら業界平均から見て自社がどの程度のポジションにいるのか、知ることが可能ですね。

 

ちなみに、業界平均を申し上げると、

全産業 93.5%

建設業 96.5%

製造業 91.4%

情報通信業 95.2%

運輸業 96.6%

卸売業 90.0%

小売業 96.6%

不動産業 86.8%

飲食・宿泊業 98.6%

サービス業 94.7%

※同友館:中小企業経営実態調査に基づく経営・原価指標データより

 

となっています。

 

自社の損益分岐を計算されたことがないかたは、これを機会に貴社の損益分岐点(売上高)を計算してみてはいかがでしょう?

財務分析に役立つのはもちろんですが、業界の平均値などを自社と比較するなどして、経営の参考にされてみても面白いかもしれませんね。

 

池田

連絡先イメージ
経営コンサルタント写真

会社再生、事業承継・M&A、経営顧問、資金調達など経営コンサルティングのご相談は、当事務所までお気軽にどうぞ。

ご相談はこちらから

無料ダウンロード

経営改善計画書書式
資金繰り表書式

人気コラムTOP5 (前月)

著作・出演等

著作等
池田ビジネスコンサルティングロゴ

事業再生・会社再生・事業承継・顧問等経営コンサルティング

池田ビジネスコンサルティング