経営コンサルタントコラム 2013年4月分

「じつばつけいかく」って何だ?(その2)-2013年4月30日号

では早速見ていきましょう。

まずは「実現可能性の高い抜本的な」の定義から。

これは『中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針』に具体的な記載があります。

番号でいうと、III-4-9-4-3でリスク管理債権額の開示という項目です。

下記がその内容です。

 

中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針

III-4-9-4-3 リスク管理債権額の開示

(2)開示区分

③貸出条件緩和債権

ハ.過去において債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として金利減免、金利支払猶予、債権放棄、元本返済猶予、代物弁済や株式の受領等を行っ た債務者に対する貸出金であっても、金融経済情勢等の変化等により新規貸出実行金利が低下した結果、又は当該債務者の経営状況が改善し信用リスクが減少し た結果、当該貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていると見込まれる場合、又は当該債務者の債務者区分が正常先と なった場合には、当該貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないことに留意する。

特に、実現可能性の高い(注1)抜本的な(注2)経営再建計画(注3)に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合(注4)には、当 該経営再建計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。また、債務者が実現可能性の高い抜本的な経営再建計画を策定 していない場合であっても、債務者が中小企業であって、かつ、貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に当該経営再建計画を策定する見込みがあるとき (注5)には、当該債務者に対する貸出金は当該貸出条件の変更を行った日から最長1年間は貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えない。

 

(注1) 「実現可能性の高い」とは、以下の要件を全て満たす計画であることをいう。

一計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること

ニ計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと

三計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること

 

(注2) 「抜本的な」とは、概ね3年(債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない。)後の当該債務者の債務者区分が正常先となるこ とをいう。なお、債務者が中小企業である場合の取扱いは、金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」を参照のこと。

 

(注5) 「当該経営再建計画を策定する見込みがあるとき」とは、銀行と債務者との間で合意には至っていないが、債務者の経営再建のための資源等(例えば、売却可能 な資産、削減可能な経費、新商品の開発計画、販路拡大の見込み)が存在することを確認でき、かつ、債務者に経営再建計画を策定する意思がある場合をいう。

 

書いてありましたね。

「実現可能性の高い」とは、計画の実現に必要な関係者との同意が得られていて、計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超え る追加的支援が必要と見込まれる状況でなく、計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること、となっています。

「抜本的な」は、概ね3年(債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない。)後の当該債務者の債務者区分が正常先とな ることをいう。なお、債務者が中小企業である場合の取扱いは、金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」を参照のこと、とあります。

 

ざっくりいうと、かっちりした厳しめの計画で、3年で債務超過解消ね、ということになります。

ただ、抜本的なの尚書きで中小企業の場合は別途参照せよ、となってますので、中小企業の皆さんはそちらの別途も確認しておかないといけません。

 

次回、その金融検査マニュアルを見ていきます。

 

池田

倒産しても自宅や生活費は取られない!?-2013年4月24日号

4月23日の日経朝刊に「経営者 全財産没収せず」という記事がありました。

 

中小企業庁と金融庁は経営者の個人保証が起業の足かせになっているとして、倒産しても個人財産が全額没収されないように指針を作る、とのことです。

 

日経に載った、ということは役所としてはこう考えていますよ、という間接的なお達し。

方針は決まっていて、あとはもうその基準をどうするかだけの段階でしょうね。

 

いやー、これはなかなかすごいことです。

 

ぜひとも仕上げていただきたい。

 

さて、これで中小企業向け融資が萎んだらどうするんでしょう。

今の金融機関さんは保証や担保が無ければ貸さない、貸せないです。

事業の目利きができる人なんてそうはいません。

 

うーん、杞憂には終わらないでしょうねぇ。

自宅保護記事

「じつばつけいかく」って何だ?(その1)-2013年4月17日号

金融機関に支払猶予を申し込むと、実抜計画(じつばつ・けいかく)とか合実計画(ごうじつ・けいかく)とかいう言葉を耳にすることがあると思います。

 

実抜だの合実だのは金融機関側の問題なので本当は顧客に話すようなことではないのですが、銀行の方はとかくこういった専門用語風の言葉を使いがちです。

 

話す相手が中小企業の親父さんであることを考慮していない発言ですね。とはいえ、謎の言葉を発せられて狼狽えないよう、こちらもある程度その「じつばつ」や「ごうじつ」なる内容を理解しておくに越したことはありません。

 

先ほどから出ている実抜、合実という言葉ですが、そもそもこれはそれぞれ、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」、「合理的かつ実現可能性の高 い経営改善計画」を略した名称なのですね。そのままだと長ったらしいので、簡略化されて、実抜計画、合実計画とよばれています。

 

再生計画や改善計画を金融機関に提出した際に金融機関が見るところは、原則、この実抜計画や合実計画に沿った内容となっているか否かです。

 

基本的に金融庁側は債務者企業を応援しなさいよ、という方針ですから、これに反することは金融機関側はやりづらい。

ではどういった場合に応援しなければならないか、というところで実抜計画を出しているかどうか、出せるかどうか、が大きな分岐点になるわけですね。

さらに中小企業の場合は合実計画でもかまわない、とされています。(このくだりで勘が良い方は実抜計画よりも合実計画の方が緩いものだな、ということがわかるかもしれませんね。)

 

言い換えると金融機関としてはこの実抜計画がなければ債務者企業を応援しない、支払猶予などに応じない、ということになってしまうわけですから、大変重要な資料になるわけです。

 

支払猶予をお願いする立場としては、お願いされる金融機関側の事情も汲み取って、対応さしあげるのがお互いにとってWIN-WINの関係になり、近道です。

 

実抜計画の金融機関用、リスケ用の資料の側面について説明してきましたが、きちんとした経営再建計画を作ることは、その企業さん自身のためになる、必要であることはいうまでもありません。

 

作らされている、という意識で作成するのは非常にもったいないです。時間も手間も大変かかる作業ですので、自分のためにという意識で取り掛かった方が、やる気になりますし、実際に経営の役に立ちます。

 

さて、ではその「実現可能性の高い抜本的な」や「合理的かる実現可能性の高い」とは一体なんなのか。

 

そのままでは曖昧すぎる言葉なので、見ただけではわかりません。具体的な内容は金融庁が出している監督指針やマニュアル、資産査定用のチェックリストに記載があります。

 

少々長くなりましたので、次回からこの指針やマニュアル、チェックリストなどを見ていくことにします。

 

池田

返済資金を借入れで賄わない(その2)-2013年4月8日号

例えば、売上が1億円として、原価率が75%としましょう。

とすると、売上1億円-原価7500万円で粗利は2500万円ですね。

販管費が売上の15%くらいだとして、1500万円。

差引1000万円が営業利益。

借入金が1億円だとして、金利3%だと支払利息が300万円。

他特殊なものはないとすると税前利益は700万円。

減価償却費が300万円だとして、返済原資は1000万円。

 

借入金の返済期間が8年とすると、本来は年1250万円返済しなければなりません。

返済期間が5年なら年2000万円です。

返済原資と比べてとても無理な金額なので、リスケジュールをお願いせねば、お金がどんどんなくなって資金不足に陥ってしまいます。

金融機関にリスケをお願いするにあたり、再生計画を策定します。

 

実質債務超過額が5000万円だとすると、債務超過解消までに5年。完済までに10年。

通常、返済原資の8割程度を返済に充てますので、年800万円の返済が現実的な数字。

とすると、債務超過解消までには6.25年。完済までに12.5年

なんとかやっていけそうですね。

 

これがもうちょっと苦しい会社だったらどうなるか。

例えば原価率が85%(こちらの方が現実的かもしれませんね)だとしたら。

 

そうすると粗利は1億円の15%で1500万円です。

販管費は1500万円ですから、営業利益はトントン。

支払利息が300万円だと税前利益は▲300万円で赤字です。

減価償却費が300万円ですから、返済原資は▲300万円+300万円で0。

 

返済原資が無い状態です。

これでは単純にリスケだけでは解決しないですね。

売上を上げるか、コストを下げるかして少ないなりにも返済原資を作り出さねば、一生返せません。

 

で、2番目の例(粗利15%の方)で、やってはいけない、返済資金を借入れで賄うことをしたとします。

 

とりあえず2000万円借りることができました。

 

その後の状況は、というと単純に現金が減っていきます。

返済額が年2000万円なので、1年経つころにはもう資金が底をつきます。

さすがにそうとなると、貸してくれるところはありませんので、これはまずい、ということになって再生計画を考えます。

 

再生計画は中小企業の場合、基本5年~10年で正常化するようなものでなければなりません。

売上が上昇する、というのはなかなか簡単にいきませんので、コスト削減による収支改善が基本形になります。(現場としては売上UPとコストDOWN両方一緒にやることになります)

 

そのままでは返済原資がないので、原価率と販管費の低減をするとしましょう。

85%だった原価率を80%まで下げ、販管費も2割削減します。

 

とすると、

 

とすると、売上1億円-原価8000万円で粗利は2000万円ですね。

販管費が2割削減して(15%→12%)として、1200万円。

差引800万円が営業利益。

借入金が1億円だとして、金利3%だと支払利息が300万円。

他特殊なものはないとすると税前利益は500万円。

減価償却費が300万円だとして、返済原資は800万円。

 

実質債務超過額が5000万円+2000万円で7000万円だとすると、

債務超過解消までに8.75年。完済までに15年。

通常、返済原資の8割程度を返済に充てますので、年650万円の返済が現実的な数字。

とすると、債務超過解消までには10.77年。完済までに18.5年

これは再生計画としてはかなりきびしい。

 

ここで債務超過解消までに要する期間と返済の関係を見ていきましょう。

 

債務超過額        債務超過解消に要する期間

        (返済額650万円)    (返済額800万円)   

3250万円      5.00年          4.06年

4000万円      6.15年          5.00年

5000万円      7.70年          6.25年

6500万円      10.00年          8.13年

7000万円      10.77年          8.75年

8000万円      12.31年          10.00年

9000万円      13.85年          11.25年

10000万円      15.38年          12.50年

12000万円      18.46年          15.00年

 

実抜計画で求められる正常化までの期間は原則3年、中小企業なら5年~10年ですから、正常化までに10年というのがかなり際どい分水嶺。6500万円という数字が限界値ですね。

 

これを超えるとなると、収益改善が見込めない限り、法的な再生か、債務免除などを含めた抜本的な私的整理の方法を探ることになります。

金融機関側も債務免除など何がしか負担をするとなれば、経営者の責任も当然に問われ、私財の提供、減資などを求められることも考えられます。

 

今回そもそもの実質債務超過額は5000万円でした。

追加で2000万円借入れたので債務超過額は7000万円となりました。

分水嶺、超えちゃいましたね。

最後のあがきの2000万円がこの差を生むわけです。

返せないお金は借りてはいけません。

 

普通に事業を回して返済できない状況になったら、まず借入金融機関に相談すること。さすがに借りてきて返せという担当はいないでしょう(そういう担当者もなかにはいますが)。

 

再生計画を策定する上では借入総額が少ない方がまちがいなく良いです。

 

無理をせず、早めに手を打つことが、会社再生・事業再生への何よりの近道です。

 

池田

返済資金を借入れで賄わない(その1)-2013年4月1日号

売上が減少し、返済できるだけの利益が上がらないとき、どうしますか?

 

多く見受けられるのは、返済資金を融資で引っ張ってくること。

つまり、借りたお金を借りたお金で返すわけです。

これはまずいよね、と誰もが思いますよね。

借入れが雪だるま式に膨らむのは間違いないので、すべきではない、と普通なら皆さんそう考えます。

 

しかし、再生の相談にいらっしゃるほとんどの企業が借りて返済しているのが現実です。

それはなぜか。

 

第一は、売上の減少が一時的なもので後すぐ回復するから大丈夫という読み(ある意味願望)。第二は、そこに融資する金融機関がある、借りられる、ということです。

第一の読みは大抵外れます。外れなくとも絶対に100%回復する明確な証が無い限り、その読み(判断)は間違いです。なぜなら世の中絶対は無いからです。ですので、返済できない状態になって、その資金を借入金で賄うのは100%間違いです。

 

なぜそこまで厳しく断じるか。

それはその借入金が再生の重荷になるからです。返済のための借入れをしなければどれだけ再生がスムーズか、現場実務で身を以て感じているからです。

 

普通に事業をして返せないものを借入れで賄ったとしても、早晩結果は決まっています。

借入れた資金が底をつくわけですね。

底をついたらどうするか。もう一度借りますか?たとえもう一度借入れができ、返済資金を用意できても結果は同じです。また資金が底をつくわけです。

それは返済できるだけの利益が上がっていないから。

 

となると、もう無理ということとなり、再生の道を探ることになります。

再生の道を探るとは、つまり、再生計画なり経営改善計画なりを策定することです。

再生計画は自社の再生のために策定するわけですが、別の顔もあります。それは対債権者、借入金融機関等に対する説明資料の面です。

 

普通に返せないわけですから、利益構造が再構築できるまで、つまりは利益が出るようになるまで、返済期間を延ばしてもらったり、一定期間は返済を猶予してもらったりする必要があります。頭を下げてお願いするわけです。

 

そのとき、「これこれこういう理由で返済できなくなり、今現在こういう状態で返済が困難になっています。ついては、こういう改善策を考え、実行するとこの くらいの利益が出るので、この利益のうちこれくらい返済に充てられます。ただ、そうすると完済済までには何年かかってしまいますが、応じていただけません か?」という話をするための資料ですね。それが再生計画なり改善計画ということになります。

 

その計画の妥当性などを判断して金融支援の可否を貸出金融機関は判断するわけです。この計画じゃ無理、とか。

 

借入総額を完済するにはどのくらいの年月がかかるか、というのが非常に重要なんですね。

法人税を考慮しない(大抵繰越欠損金があるので)と税引き前当期利益に減価償却費など実際にお金が出て行かない費用を足しこんだ額が返済に充てられる限界値です。1000万円の税前利益で減価償却費が500万円あるなら1500万円は返済できるわけです。

 

ちょっと長くなりましたので、つづきは次回。

次回は返済資金を借りると後の再生計画にどう響くかについて例をあげてご説明します。

 

池田

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