金融円滑化法が終わるとどうなる?

■円滑化法終了のニュースについて

 

巷の新聞紙上では、中小企業金融円滑化法(長いので以下「円滑化法」と略します。)が来年3月に期限を迎えるので、その影響で倒産が増える。円滑法終了に備え再生ファンドが組成された、というニュースが踊っています。

 

実際に円滑化法を使われて金融機関から返済の猶予をいただいている企業さんにとっては、終わったあとはどうなるのだ?回収に走られるのか?などという心配に気が気でないかもしれません。

 

インターネットで検索すれば、「円滑化法終了後の対策指南!○○会計事務所」などという広告・文句が目に入り、焦る気持ちに追い打ちをかけます。はてさて実際はどうなのでしょう?

 

 

■なぜ円滑化法ができたのか

リスケ法、返済猶予法などとも呼ばれる円滑化法ですが、本当の名称は「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」と少々長いものです。

 

“臨時措置”となっているので、期限のある、時限立法であることがわかります。

この期限、そもそもは平成23年3月までだったのですが、一年間延長されて、その期限がついに来年3月に訪れる、ということになっています。

 

この法律、当時の亀井金融担当大臣肝いりで成立したことを覚えておられる方もいらっしゃるかもしれません。今から3年前の平成21年11月のことです。

「亀井法案」などとも言われましたね。ちょうどリーマンショックの影響で景気が落ち込み、製造業を中心に日本の中小企業が大きな打撃を受けたタイミングです。

 

当時、多くの中小企業の財務状況が悪化しました。減少した売上に比べ過大な債務(借入)を負うこととなった企業は、借入金の返済が困難になり、貸し手金融機関は不良債権、不良債権予備軍を多く抱えることになりました。

このような景況下、貸し渋り・貸し剥がしの懸念が生じ、その対策として生まれた法律がこの円滑化法です。

 

 

■円滑化法はどのくらい使われているのか

売上減少などにより返済負担が重くなった中小企業さんは、貸付条件の変更(リスケジュール)を金融機関さんにお願いし、返済負担を軽減します。円滑化法は、ざっくりいうと、中小企業からのお願いを金融機関は基本的にのみなさいよ、という法律なので、お願いさえすれば、貸付条件の変更(リスケ)ができる、ということになります。

 

実際、これまでの申込件数は約313万件、実行中の数は約289万件(金融庁資料より)もあります。日本の中小企業数は約177万社(2012年中小企業白書より)ですから、一社につき借入金融機関が5行あったと仮定すると、申込みをした企業数は313万件/5行で約63万社になります。

 

177万社/63万社はなんと全中小企業数の35%!です。

 

10社中小企業が集まったら少なくとも3社はリスケ中だ、ということになります。自分はリスケなどしていない!という社長さん、もしかしたら会合などで顔を合わすお知り合いの社長さんはリスケ中かもしれませんね。

 

しかし、金融機関は貸付条件の変更など、通常(円滑化法が無ければ)、簡単に応じてはくれません。未回収の恐れありと判断されたり、信用不安だという話になればいち早く回収に走るのが金貸しの常道です。逆の立場で考えれば当り前ですよね。円滑化法があるからこそ、の話です。

 

 

■円滑化法ってそもそも何?

ここで、円滑化法ってそもそも何なのだ?ということについてお話します。

円滑化法を利用しているのにかかわらずよくわかっていない社長さんもいたりしますので、少々おさらいです。

 

条文に書かれている円滑化法の目的は、次のとおりです。

 

「この法律は、最近の経済金融情勢及び雇用環境の下における我が国の中小企業者及び住宅資金借入者の債務の負担の状況にかんがみ、金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に配意しつつ、中小企業者及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るために必要な臨時の措置を定めることにより、中小企業者の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定並びに住宅資金借入者の生活の安定を期し、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」

 

はい、長い文章ですね。

さて、大きく分けてポイントは4つ。

 

1.金融機関の努力義務

2.金融機関自らの取り組み

3.行政上の対応

4.更なる支援措置

 

 

■円滑化法のポイント

もっとも重要なポイントは1.金融機関の努力義務です。

これがあるからリスケジュール(貸付条件の変更)に応じてもらえるのですね。

 

その内容は、

 

・金融機関は、中小企業者又は住宅ローンの借り手から申込みがあった場合には、できる限り、貸付条件の変更等の適切な措置をとるよう努める。(注)対象となる金融機関は、銀行・信金・信組・労金・農協・漁協及びその連合会、農林中金。

・金融機関は、申込み又は求めがあった場合には、他の金融機関、政府関係金融機関、信用保証協会、企業再生支援機構、事業再生ADR、中小企業再生支援協議会等との連携を図りつつ、できる限り、貸付条件の変更等の適切な措置等をとるよう努める。(金融庁資料より)

 

です。

 

上段の「~できる限り、貸付条件の変更等の適切な措置をとるよう努める」が肝ですね。これがあるので、リスケの申込みがあったら原則応じないとまずいわけです。だから貸付条件の変更が容易なのですね。

 

 

■金融機関にとっての円滑化法

しかし、貸し手の金融機関にとっては厳しい内容です。

とりあえず申し込みがあったら貸付条件を変更せよ!というお達しです。

 

なかなか納得できません。そこで、金融機関側にとってもメリットがあるようにせねばなりません。そこで出てきたのが、貸付条件変更債権(リスケ申込みがあった企業)は不良債権にしなくとも良い、という措置です。

 

不良債権にしてしまうと金融機関はその分だけ(区分によって何%等ありますが)貸倒引当金を積まないといけません。貸倒引当金を積むことは費用が増す、ということですから、その分金融機関の収益が圧迫されることになります。これをせずともよい、というのは金融機関にとってはありがたい。

 

また、金融機関は自己資本比率を保持しなければなりません。資産としての貸付債権が不良債権として負債になってしまうと応じて資本が小さくなってしまいます。これは困る。リスケに応じても不良債権と看做されないなら(実際は不良債権ですが)まあ、良しとするか。そんな落としどころです。

 

まとめると、借り手にもプラス、貸し手にもデメリットだけでない格好で円滑化法は船出したわけです。

 

 

■円滑化法終了後、何が起きるか

では、円滑化法が終了するとどうなるのか。

これまで公に認められてきたリスケは今後無理なのか?

はてさて貸し剥がしなどが頻発し、中小企業がばたばた倒産するのか?

 

結論からいうと上記いずれも起きないでしょう。

 

なぜかというと、円滑化法施行前の状況に戻るだけだからです。(当たり前ですね)

円滑化法施行前でもリスケ(貸付条件の変更)は行われていましたし、リスケ中の企業に対する新規融資はほとんど行われていませんでした。鑑みると、貸し剥がし、という状況が急に起こり、混乱するかというとそのようには考えづらい。

 

ただ、円滑化法があったときのように簡単にリスケはできなくなります。

 

貸付条件の変更の契約は半年、1年ごとであったり、3か月ごとであったり、都度見直しができるようになっています。つまり、今の貸付条件の変更契約の次の更新タイミングが円滑化法終了後であると、これまでのように簡単にはいかない、ということになります。この点は十分注意してかからなければなりません。

 

 

■金融機関側の事情

記載のとおりにやれば不良債権としなくてもよい、という法律がこの世から消えるわけですから、その後は不良債権が表に出てきます。普通の金融機関でしたら、不良債権処理を進めて、財務体質を健全化したいところ。ただ、この処理を一気に進められるような金融機関はそう多くはありません。

 

不良債権を処理すれば損が出ます。処理といってますが、引当金や貸倒損失つまり費用ですね。ということは、税引き前当期利益がその分減少します。当然、税後の当期純利益も減るわけですから、不良債権を処理しすぎると赤字になってしまう理屈です。

 

引当金を積んで負債が大きくなったり、純利益が赤字になればその分資本が毀損します。自己資本は金融機関にとって重要なキーワードでしたね。このような理由により、おいそれとは不良債権処理できない事情が金融機関側にもあるのです。

 

ただ、気を付けなければならない点もあります。それはメガバンク。メガバンクの財務状況は相当に改善され、最高益を出すほどです。不良債権の処理の準備は整っています。もしかすると、メガバンクはリスケに応じず、処理の方向に向くかもしれません。

 

なにが起きるかというと、サービサーなどへの貸付債権の売却です。しかし、これも交渉相手がサービサーさんになるだけです。銀行さんと比べたら少々タフな交渉になるかとは思いますが、きちんとした返済計画を示せばそれなりにきちんと対応してくれます。

 

 

■円滑化法終了を見越してすべきこと

先程申したように、リスケ(貸付条件変更)についてはこれまでのようには簡単にいかないかもしれません。

 

これまではある意味借り手の方が強かった。

貸し手金融機関からすればリスケを申し込めば認めざるを得なかったわけです。

 

しかしこれからは、しっかりとした返済計画、事業計画の提出を求められるでしょうし、そもそも“認めなくてもよい”という強いポジションに金融機関の立ち位置が変化します。

 

とはいえ、前述の理由で全面的に非協力的な金融機関は少ないでしょう。また、企業が潰れては貸し手金融機関も全損です。ある意味、企業と金融機関は一心同体にあるわけですから、闇雲な処理、理不尽な応対などは考えにくい。

 

とすると、きちんとした返済計画、事業計画を作り、きちんと金融機関と話合っていくことが“円滑化法終了を見越した対策”になります。

 

しかし、返済計画や事業計画をしっかり作るのは誰の為でもない、その企業自身のためです。自らの財務状況を認識し、事業の計画を練り、何ができて何ができないか、どうやって会社を継続させていくかを考えるのは当り前にしなければならないことです。

 

きちんとやるべきことをやる、これができれば円滑化法終了恐れるに足らず、です。

 

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