ワンマン経営の功罪

■組織的特徴

中小企業の社長は創業者&オーナーであることがほとんどです。

 

今現在は売上に比べ過大な債務を抱えている社長さん(私がよくお会いする皆さん)も、つい最近まではやり手社長と噂されるような方であった方がほとんどです。

 

過剰債務になるほどお金が借りられたということは、反面、借り入れ当時は業績が伸び、信用も得られていたからこその話ですからね。

 

さて、そのような社長の会社の組織構造の傾向はというと、上意下達・トップダウンのワンマン形式となっていることがほとんどです。大抵、社長一人で創業し、業務が忙しくなって人を雇う、という流れで成長してきた会社がほとんどですから、ある意味これは当り前の傾向ですね。

 

組織内部的特徴は、というと、業績が伸びている会社の「できる」社長さんですから、「できる」社長の言うことを(ある意味、言うこと「のみ」を)黙って、粛々と、効率的にやるような組織形態となっていることが多いようです。

 

下手に意見をするとすぐ「クビ」にされたり、降格されたりしますから、社員も余計なことは言いません。とはいえ、意思反映については効率的に動く組織なので、社長が波に乗っているときは、目覚ましい成長を見せます。魚がいる場所に鵜匠が船を進めれば、鵜はどんどん魚を捕ります。魚がいる場所を鵜匠が知っていれば。

 

となると、不要なもの、使わないものは退化していくわけですから、ワンマン経営者の下では、自分で考える、という観念が組織から無くなっていきます。保守的な、縦割り的な、閉鎖的で全社的思考をしない組織になっていくわけですね。

 

社長さんからすると、「うちの社員は何も考えてない」「やる気が感じられない」「自分のことしか考えていない」ということになるわけですが、ワンマン軍隊組織で元々社員の意見を受け入れていないわけですから、そのようになるのは逆らえない、自然の流れです。

 

ワンマン社長さんは、もともと管理されたり、人に指示されたりするのが嫌いで独立したようなタイプの方が多いように見受けられます。なので、自分の会社の社員にも、自分と同じように、野心的でやる気に満ちた、自由闊達な行動を求めます。

 

しかし、社長の意に反して、そのような企業の社員さんは、中小企業であっても、とても保守的で官僚的です。部門間連携はできていませんし、責任の所在も曖昧です。下手をすると大企業の方がその辺イージーで柔軟に動いているかもしれません。

 

ワンマン社長の下では、ミスが起きたときに誰の「せい」でもないようにしておく必要があるわけです。でないとすぐクビや降格など、自分の生活に直接的な影響が出てしまう事態を招いてしまうことになりますから。ある意味、大企業ほど身分が安定しておらず、転職のハードルも高い、中小企業の社員さんが斯様に保守的になるのは理解できますね。

 

ついては、中小企業ならそこまで要らないだろうというほどの書類手続きや内部稟議手続があったりします。さらには、部門間での責任の押し付け合いなどをという、ある種「せせっこましさ」があったりするのですね。

 

そのような組織的爆弾を抱えながらも、「できる」社長さんさえ間違わなければ、社員さんは社長の意思を忠実にこなしていきますので、業績は上昇カーブを描いて成長していきます。

 

 

■リスク

ただ、残念ながらどんなに「できる」社長さんも人間ですから間違わない、ということは100%無いのですね。

 

人間、誰しも完璧はありません。

ついては、どのくらいの間違いなら経営的に許容できるのかを考える必要があります。99%正解でも1%の間違いが致命傷になることもありますからね。

 

例えれば、時速5キロで走行中に起こす事故と、時速100キロで走行中に起こす事故では、同じ居眠りでもその誤りが与えるインパクトは雲泥の差になります。

 

会社経営に当てはめれば、時速5キロでは些細な誤りも事によっては、企業の存続に大きな影響を与えることになる可能性もあるわけです。

 

つまり、その判断が誤りだった場合、それによる影響が程度の軽いものか、事業の継続性に疑義が出るほどのものとなるか、そのリスク軽重を図りながら経営判断はしなければ、事業の持続性の観点からも、まずい、ということになりますね。

 

「できる」社長の会社は、社長が一番「できる」わけですから、新規の事業アイデアや投資プランはすべて社長の考えた事、ということになります。

 

このアイデアやプランを事業として進めるかどうかを決めるのが経営判断なわけですが、判断するのは社長、つまり考えた人ですね。となると、「やらない」という選択をするのはかなり難しいことになります。

 

社長自らが考え抜いたもの(真剣かつ深く)を自ら否定することはできませんし、社員に意見を求めても否定されることはありません。その理由はこれまで述べてきたとおりです。

 

ですので、ワンマン社長の会社は構造的にイケイケドンドンになりやすい組織であると言うことができます。

 

さて、そういう会社が経営判断を誤るとどうなるか。

 

判断すべき事柄の軽重をリスク分析することに重きが置かれていないので、まさに運次第。運が良ければ躓く程度、運が悪ければ窮境に陥る、ということになります。いやはや怖いことです。商売はある程度ギャンブル的要素はあるにしろ、それ以前のコワさです。

 

先に申し上げたとおり、一般的にそれはすべきでない、ということであっても、組織内にそれを意見することができる社員はいませんし、たとえ意見したとしても、言下に否定されるのがオチですから、誰も何も言いません。

 

言うことによるリスク(クビとか降格とか給料下げるとか)と言わない事のリスク(経営的にどうなの?というところ)を考量すれば社員は前者を選んで口を閉じるのは当然ですよね。

 

同様のロジックで、現場サイドで問題が発見できたとしても、それを伝えることは後回しになります。社長の指示通りにやってうまくいかない、ということはあってはいけない組織構造なのですね。たとえ問題を報告しても、そもそもの経営判断の問題ではなく、現場の運用の問題にされ、いわれのない責任を追及されることが目に見えています。

 

本来であれば、早期に問題を発見し、早期に対応できれば、会社が窮境に陥る可能性は限りなく減ずることができます。しかし、そうはなりません。

 

これがワンマン経営の陥りやすい弱点です。

 

「俺の会社だから、どうなろうと俺の勝手だ」という社長さんもいらっしゃるでしょう。それはそれで構いませんが、窮境に陥り苦労するのはご自身です。天に唾はきゃ自分に帰る、わけです。

 

であるならば、どうすればいいか。経営リスクを(できるだけ)回避するためにはどのような組織体制をとれば良いか。このような視点を持って経営にあたっていただければ、再生の窮境状況に陥る可能性を減らすことができます。

 

企業再生は大変です。精神的にも大きな負担となります。しかもどの経営者さんも初めての経験です。正しい、的確な判断と行動がされることは考えづらい環境になります。ですので、ほとんどの方は再生ままならず、倒産していきます。

 

再生のポジションにある会社は、どの会社も皆、過去は好業績の企業です。

「うちの会社には関係ないよ」という考えが少しでもよぎったら、小さいガンがすでに巣食っていると思っていただいて間違いありません。

 

好事魔多し。

儲かっている時こそ冷静な判断を。

働く社員さん、取引先さん、そしてご自身のために。

 

宜しくお願いします。

 

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問題解決画像池田輝之

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