倒産防止共済と売掛保証

■倒産防と売掛保証のちがい

 

最近、知人に「売掛金保証って知ってる?」と聞いたところ、「倒産防(とうさんぼう)と同じでしょ?」という答えが返ってきました。貸倒れた売掛金分のお金が入ってくる、という意味では(キャッシュ・フロー的概念では)合ってますね。

 

が、倒産防と売掛保証は根本的に違うんです。

 

ちなみに、倒産防というのは倒産防止共済の略で、経営セーフティ共済という国(中小機構)の制度です。ざっくり内容を言うと以下のとおり。

 

▷倒産防(中小企業倒産防止共済~経営セーフティ共済)

取引先事業者が倒産したことにより売掛金債権等の回収が困難となった場合に、共済金の貸付が受けられるもの。

 

【特徴】

・貸付

・無金利

・返済期間5年~7年

・貸付額 50万円~8000万円

(回収困難となった売掛金債権等の額と掛け金総額の10倍のいずれか少ない額)

・損金算入可

 

【貸付が受けられない場合】

・取引先事業者の倒産が加入後6か月未満に生じたもの

・請求が倒産日から6か月を経過した後になされたもの

・中小企業者でない

・貸付金の額が50万円未満の場合

・貸付金の額が共済契約者の月間総取引額の20%未満

の場合

・共済契約者に倒産または倒産に準ずる事態が生じていいるとき

・共済契約者がすでに貸付を受けた共済金の償還を怠っているとき

・倒産した取引先事業者に対し、売掛金債権等を有することとなったこと、またはその回収が困難となったことにつき、共済契約者に悪意または重大な過失があったとき

・上記のほか、共済契約者と倒産した取引先事業者との取引額、代金の支払方法などが確認できないとき

 

倒産防は掛け金を払うことで、貸倒れた売掛金分を貸してくれる制度。

貸してくれるだけで、貰えるわけではありませんね。

しかも案外貸してもらえない場合が多い。

50万以下はダメとなると、単発での対応は意味ないですね。

 

売掛保証は保証料を払って、貸倒れた売掛金に対応する保証金をもらうもの。

 

どちらかと言えば保険、取信(とりしん:取引信用保険)に近い感じです。

取信だと単発の取引は対象にしてもらえづらいものですが。

 

売掛保証は、

仕事は取れそうだけど、相手先の信用度がイマイチ。

とか、

新規案件獲得や取引先の信用力低下や拡大要請タイミング

で、うまくはまりやすいです。

 

もちろん、与信の手間が減ることで管理コストが下がる、というプラスαもありますね。

なので、卸売業さんなんかが一番利用が多いサービス、というイメージ。

 

と、ここまではわかっていた(つもり)ですが、自分の記憶も若干あいまいなところもあるので、当事務所の近く(車で10分)の中央区は蛎殻町にある売掛保証サービス会社、㈱トラスト&グロースのIさんに直接会ってお話しを伺うことにします。知ったかぶりは危険ですので、はい。

 

 

■売掛保証サービスって何デスカ?

 

中央区は蛎殻町にある、売掛保証サービス会社、株式会社トラスト&グロース(以下、T&G)さんを訪ね、売掛保証サービスについて、いろいろと根ほり葉ほり聞いてきました。

 

ご対応いただいたのは、シニアコンサルタントのIさんです。

Iさん、いろいろありがとうございました。

 

さて、早速。

まずは「売掛保証ってそもそも何ですかー」というところ。

 

Iさんからは、『私どもの、というお答えしかできませんが、販売先に対する売掛債権を保証し、万が一支払不能になった場合に予め設定した保証金額をお支払するサービスを弊社では売掛保証といいます。』とのお答え。

 

ここで気になるのは保証いただく売掛債権の内容。

果たして、どんな先のものでもいいのでしょうか? 保証してもらいたいのは所謂「やばそう」な会社のものが多いわけですからね。

 

それについては、

 

『さすがになんでもかんでもは難しいです(笑)。 調査会社の評点や弊社のデータベースを基に審査をします。』とのこと。

 

そりゃそうですね。

 

審査による評価によって保証の限度額や保証料が変わってくるそうです。 ちなみにT&Gさんの保証目安は以下のとおり。

 

調査会社の評点 保証限度総額 保証料率(月)

66点以上    ~30,000千円 0.125%~

61点以上    ~30,000千円 0.375%~

56点以上    ~30,000千円 0.750%~

51点以上    ~25,000千円 1.100%~

47点以上    ~15,000千円 1.350%~

40点以上    ~8,000千円  1.800%~

39点以下    ~5,000千円  個別審査により

情報無・新設  ~3,000千円  個別審査により

 

個別保証の場合は、この保証料率の1.5倍とのこと。

対象者数が多いと料率の割引があるそうです。(詳しくはT&Gさんのサイトを参照ください)

保証してもらいたいくらいですから、評点が50点以上というのはないですよね。しかもいまどきの50点は悪くない評価ですし。

 

となると50点より下の限度額なり料率が実務上の参考値になるんでしょうね。

年利に直すと高いですけど、実際の期間は3か月とか半年とかですから利益がそれなりにとれるビジネスであれば、保証料払っても案件を取った方が良い、という判断になるでしょう。

 

 

■どういうときに使えばいいのですか?

 

次に、具体的にどのような場合に使うものか、について。 こちらの頭にあるのは、アグレッシブに営業を取りたい、拡大をしたいときとか、信用の低い取引先が出てきたときのイメージですね。

 

Iさんに伺うと、たしかに上記のような場合が多いようで、

 

・自社与信の枠を超えて取引枠の拡大要請があったとき

・既存取引先の信用力低下

・企業内容が不明瞭な新規取引先

 

とかいう場合が基本的な活用方法のようです。

 

もうひとつ、違う視点からの活用方法があるようで、これは気付きでしたね。

簡単に言うと、保証料払うことで与信管理コストを減らしちゃおう、という視点です。

 

たしかに、急成長中のベンチャーさんとかだと、バックオフィス、管理部門が手薄な場合が多い割には案件や取引先が拡大していて管理が追い付かないってとこありますものね。 人を一人増やすと年間もろもろ1千万くらいかかりますし。

 

払う人件費と比較したら、保証料の方が断然安いね、ということもあるかもしれません。 実際に人を増やしたからと言って与信管理が完璧になるわけではありませんからね。雇用増、という意味では社会にとって良いことですが。

 

他、他社保証会社の引受不可、枠の不足なんて理由もあるそうです。 こういう少々困難な案件に対応できる力がT&Gさんのノウハウなんでしょうね。

 

 

■建設業も売掛保証を活用している

 

では、どのような業界がこの売掛保証を活用しているのでしょう。

 

実際、売掛保証となると、基本的に B to B のビジネスをしている業界ですよね。

想像しやすいのは卸さん。Iさんによれば、たしかに卸売業が全体の7割を占めているそうです。

ただ、製造業やインターネット関係、建設業の方からも引き合いがあるそうなんですね。

 

製造業は何となく製品を売るので分かる気もしますが、他の2業界はいまいちイメージしにくい感じがする旨Iさんに尋ねると、 インターネット関係は相手先が新規の取引先が多いことや、管理部門の手薄さを補完するのに使われていることが多い、とのこと。

 

また、建設業は取引先の信用不安が活用の理由だそうです。たしかに。

建設業つらいですものね。

 

下請け孫請け曾孫請けの階層構造の中で、連鎖倒産も構造的に多いですし。 実際、最近、建設業の未回収の話、多いですよね。 アベノミクス騒ぎでいろんな輩も活躍中ですし。 そういう意味でも建設業さんにとっては活用すべきサービスなのかもしれませんね。

 

で、7割を占める卸業界さんの中では内訳どうなの?というところですが、アパレル関連が多いようです。2割5分ちょっと。

 

次いで食品が2割(小規模スーパーとか、厳しそうですものねぇ)、建材が2割弱(ここでも建設系(汗))というところ。 アパレルさん辛いと耳にすること多いですものね。 厳しい業界の縮図のような気がします。。いやはやいやはや。

 

ちなみに売上規模で活用に差があるかというと、あまり無いそうです。

5億以下の売上規模の会社さんは、それ以上の会社さんと比べると6割程度のようですが、卸売業さんが全体の7割を占めているので、業界特性上そのような割合となるのでしょうね。

 

 

■まとめ

 

売掛保証は、倒産防とは違い、保証金を「もらえる」仕組み。

使い方によっては管理コストの削減にもなる。

ただ、それなりに費用もかかるので、よく考えて。

 

T&Gさんは一社からでも可能!だそうです~(Iさんよりアピール)

 

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問題解決画像池田輝之

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