会社法改正に係る再生スキームへの影響

■事業譲渡

 

今年の6月に会社法の一部を改正する法律が成立しました。

1年半以内に実施されるとのことなので、遅くとも来年27年中には施行される予定です。

 

そこで、今回は改正された会社法に関して、事業再生手法がどのような影響を受けているかについて見ていきたいと思います。具体的には債務切り出し、切り離しに関する事業譲渡や会社分割の手法について、です。

 

事業譲渡や会社分割は、債務を旧会社に残し、事業を新会社に移転させることで、既存の債務を切り離し、債務負担なく、事業を再生させるための手法です。

 

普通に考えれば、とんでもなく債務者にとって都合のよい話なので、当初はむやみやたらに実行されましたし、当然たくさん裁判にもなりました。

 

とはいえ、基本的に債務負担の回避を狙って、(債権者に)黙って債務を切り離すようなやり方は、事業譲渡でも会社分割でも裁判では結局は認められませんでした。(当り前といえば当り前ですが)

 

しかし、認めません、という答えが出るまで、このようなスキーム、手法が出てきてから10年くらい経っているかなと思います。つまりは法律的にだめだとは書いてなかったわけですね。なので裁判になりました。

 

今回の会社法改正によって法律的にどうなるのか、事業譲渡、会社分割の内容も含めてお話していきたいと思います。

 

まず、事業譲渡ですが、だめ云々の前に、以前から詐害行為として取り消す権利が債権者にはありました。これを詐害行為取消権というのですが、タダで譲渡したり、安く譲渡されたりするとちゃんと回収できないじゃないかっ、権利を害されている!なので元に戻せ!と言う権利です。

 

とはいえ、言われなければそのままスルーで取引成立変わらず(取消しと無効の違い)、ということなので、気づかれなきゃオッケーです。(そんなことはないと思いますが)

 

なので、譲渡する方もする方で、一応、詐害行為と言われないようにしなきゃダメだな、という意識がありました。ので、“余程”の方でなければそれを無視して実行に移すことはありませんでした。つまり、債権者に対しても申し開きが立つような恰好にはしていたわけです。

 

そもそも事業譲渡というのは事業を譲渡するので、譲渡の対価が必要になります。

利益がきちんと出ている事業を譲渡すればそれなりの「値段」がつくわけです。

事業価値が無いような事業を譲渡するなら値段は付きませんが、そもそもそれで再生しようという事業ですから、大なり小なりの値段は付きます。

 

この代金を以て、事業を譲渡し、債務だけが残った旧会社は、債権者に返済することになりますから、この代金を支払えないとなると事業譲渡というやり方は選べません。

 

支払のやり方、というのもあるので、一概に選べないとも言えないのですが、基本的にお金を用意できないと、事業譲渡のスキームを実行するのは困難です。というのも、少しでも多く回収しようという、債権者の納得が得られないわけですね。納得が得られないとなると詐害だ!と取り消されてしまうので選択できない、という答えになります。

 

とはいえ、会社分割と比べ格段にスピーディーに事業の切り分けが完了できるので、事業譲渡はとても使い勝手の良いスキーム、方法でした。

 

しかし、債権者を害するような(つまりは債務逃れ的な)事業譲渡ついては、今回の会社法の改正でしっかり法律上、ダメですよ、意味ないですよ、という規定((新)法23条の2)となりました。

 

何と書いてあるかというと、詐害だから取り消せ、というのではなく、事業譲受会社にも返済を請求できる、つまり、債権の承諾なしに債務を旧会社に残して事業だけ移す~ようなやり方をしても、新しい会社にこれまでと同様に請求できるので、事業譲渡の意味はないですよ、という内容です。

 

となると債権者にだまって、などという戦法はもう(既にかもしれませんが)通用しなくなります。

 

 

■会社分割

 

一方、会社分割の再生スキームは、上記のような事業譲渡に関する課題(詐害性を問われる、代価が発生する。)を解決できる、債務逃れの方法として、登場しました。

 

もともとは組織再編の法律ですので、あくまで組織変更であり、詐害行為の範疇外となることが課題から逃れられるという触れ込みです。

 

事業譲渡と同様に債務を残し、事業を移す的な債務逃れのスキームとして利用されたのですが、その違いは対価として金銭が絡まない、詐害取消リスクがない(ように見えた)ということです。

 

会社分割は単純に事業を子会社化するだけの話ですので、切り分けた場合は子会社株式を親会社が持つだけです。事業を移してもそれが子会社株式に変化しただけで、企業としての資産が減少したわけではありません。

 

ゆえに、分割されて設立した会社に債務が移らない場合については、債権者を害することにならず、債権者保護措置(債権者に通知する)をとる必要がありませんでした。

 

つまり、事業だけ別の会社に移すことを「黙ってやれた」わけです。

しかも合法的に。

 

ただ、子会社の株式が親会社にあるのだからいくら事業を移しても債務から逃れたわけではないだろう、という疑問も湧きます。

 

たしかにそうなのですが、子会社が親会社の債務の連帯保証をしているわけではありませんし、親会社が差押えられ、子会社株式も差押え、換価の対象となったとしても、誰が買いますか?という話です。

 

株式の譲渡制限だってあるでしょうし、売却して処分するのは大変です。現実的には当該子会社の役員とかに買ってもらうより仕方ないでしょう。

実質的に債務から逃れることができちゃうわけです。さらにその子会社の株式を親会社が売却してしまったらもう捉えようがありません。

 

そのような理由で、会社分割は(合法的に)債務から逃れられる(ように見える)方法でした。事業譲渡と比べ、詐害など言われるリスクもなく、スキームとしてはよくできていたと思います。

 

さはさりながら、債権者にとってはたまったものではありません。

いくらよくできたスキームといえども、とどのつまりは債務逃れを目的としている訳です。

会社分割という組織再編法制度の悪用?ともとれるような方法論ですから、これは黙っているわけにはいきません。

 

そして裁判になりました。最高裁まで行った長い裁判でしたが、結局は債権者を害する、つまりは債務逃れする目的での会社分割は認められませんでした。

 

会社分割のミソは、設立子会社に引き継がれない債務の債権者には特段通知する必要がない、ということです。先にも書きましたが、事業価値が子会社株式に転化しただけですから、資産上の毀損はないわけです、会社分割しても。

 

本来的には子会社株式差押えて、配当貰って回収にあてればいいじゃんか、という収益執行的な回収の方法かなとは思います。(配当は税引き後ですけど)

 

ただ、銀行というのは株式を簡単に持てないという事情があるんですね。そんなことしたらすぐコンツェルン化しちゃいますので。というわけで、実質債務から逃れることができてしまうんです。

 

今でこそ判例が出てますが、それも「判例なんて、どうくつがえるかわからんじゃないか」というチャレンジングな人達にとっては意味のない話。そもそも抜け穴がばっちり空いているので止めようがないわけです。

 

今回の会社法改正ではその抜け穴を防ぐ格好で条項が新設されました。

 

内容的には事業譲渡とほぼ同じで、債権者を害することをわかっててやった場合、債権者は分割設立会社にも返済を求めることができますよ、と書いてあります。

要は、事業譲渡も会社分割も債務逃れできることを知ってやったら皆アウト、ということです。

 

知ってたら、というところについては、債務超過状態で譲渡だ、分割だ、というスキームを仕込んでいる時点で知らないとは言えないでしょう。そもそも意味がわからずやるような代物ではないですから。手続の煩雑さ含めて。なので再生スキームで使った時点で「知っている」とみなされる可能性は高いでしょうね。

 

とはいえ、GOOD/BAD切り分けの再生スキームは必要です。

再生の足かせとなるような負債は置いておくにこしたことはありません。(無論払えるなら払うべきですが)

 

ならば、債権者を害さないようなスキーム、払うつもりあるよ、そういうスキームにしてあるよ、という見せ方、見え方が必要になる、ということになります。

 

最近は営業利益自体が出ていない会社も多く、また、債権者もリスケ等の金融支援に応じてくれる環境のため、あえてB/Sをいじる、事業譲渡や会社分割スキームを使うことが少なくなってきましたが、やはり、根本的な解決にはこのような債務圧縮を図る方策も必要です。

 

いざ、というときは、金融機関を敵に回さず、上手に巻き込んで再生を図ってまいりましょう。

究極的には、銀行も会社も呉越同舟、です。

 

連絡先イメージ
問題解決画像池田輝之

会社再生、事業承継・M&A、経営顧問、資金調達など経営コンサルティングのご相談は、当事務所までお気軽にどうぞ。

ご相談はこちらから

無料ダウンロード

経営改善計画書書式
資金繰り表書式

人気コラムTOP5 (前月)

著作・出演等

著作等
池田ビジネスコンサルティングロゴ

事業再生・会社再生・事業承継・顧問等経営コンサルティング

池田ビジネスコンサルティング