■放棄の経緯
私事ではありますが、病気により父を亡くし、同時に相続が発生しました。
普通に相続する場合、心配するのは相続税かと思いますが、父の場合、手持ちの資産はほぼ無く、相続税の心配はありませんでした。
一方、事業を営んでおりましたので、会社借入の連帯保証債務が2億円弱ありまして、しかも期限の利益を喪失している状態であるため、すぐにも返済を迫られている状況でした。
とはいえ、各金融機関さんとは話合い済で、サービサーに行ったり、超長期のリスケを組んでもらったりして、ちろちろと返済できる範囲で返済をしている、というところでありました。
しかしながら、さすがに不動産など資産を持ちながらの話は、そう悠長な話は行っておられず、不動産市況が多少もどってきたこともあり、担保の実行とのこと(つまりは競売による返済)になりました。
居住していた自宅も会社名義であり、かつ、担保に入っていたため、競売により換価し返済に充てられることになり、賃貸住宅への引っ越しなど、検討することを余儀なくされました。
手持ち資産がないのも、借入返済によるものです。
資産は生活に必要な最低限のもので、ほぼゼロの状態となっており、事業は営んでいるものの、実際には年金生活の状況でありました。生活費の不足分については、子供たちの支援により、補っておりました。
ただ、自宅競売にあたっては、指をくわえて見ていたわけではなく、競売前に任意売却による買戻し等を検討し、話合いも行いましたが、債権者の了解は得られませんでした。
その後行われた競売にも札入の形で参加しましたが、自分の許容できる範囲、また経済合理性から鑑みた金額以上の金額で応札がなされ、結果的に自宅を維持することはできませんでした。
金額的な開きは、私の算定から1000万円程上でした。あまり高い金額で応札しても、貸家の賃料と比較して優位性がないということもあり、無理な金額では応札しませんでした。
ついては、自宅なり実家なりを失うことになりましたが、債権者さんにはその分大きな金額を返済することができましたし、一区切り、という意味でも、結果的によかったと思います。
自宅は利益を生むものではありませんので、守りたい一心で、経済合理性のない価格で買い取るのはおすすめしません。
実際、競売後1年程で父は亡くなりましたので、大きな家に母一人、しかも結構な賃料・返済負担という最悪の状況が避けられたのは不幸中の幸いかと思います。
自宅のリースバックなどを検討されているかたは、一時の感情に負けず、ぜひ慎重にご判断ください。
さて、父の事業については、病気になった時点で、ある程度整理をし、休眠状態としていました。
本社も競売により換価され、所在も知人の事務所へ間借り状態にありましたので、そちらも引き払い、事業を停止しました。
斯様な状況でありましたので、相続するものは借金だけ、という状況(つまりは債務超過状態)となっていた、ということになります。
これを下手に相続してしまうと、即座にウン億円の債務を背負ってしまうことになります。
自分の父が迷惑を掛けたもので何とかしたいところではありますが、さすがに億となるともうこれは手に負えません。
なので、相続はしない方が良い、という判断に至り、相続を放棄することになりました。
■相続の方法は3つ
このような経緯で、相続を放棄する、ことになったわけですが、ただしく言うと、放棄という選択をした、ということになります。
すなわち、相続の方法はいろいろあるということです。
実は相続には単純相続、限定相続、相続放棄の3つの方法があります。
それぞれの特徴は裁判所の資料を見ると、以下のような感じです。
・単純相続
相続人が被相続人(亡くなった方)の土地の所有権等の権利や借金等の義務をすべて受け継ぐ
・相続放棄
相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない
・限定相続
被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ
普通、相続というと一番上の単純相続が一般的です。
基本的に何もしなければ、単純相続になります、というかなっちゃいます。
なので、たとえ相続したくないと思っていても、何もしなければ自動的に相続したことになってしまいます。
放棄、という制度をしらなければ、どでかい借金を背負うことになるかもしれないのです。
自分で調べない限りは誰か言ってくれるわけではありませんから、やっかいですね。
知らぬが仏とはいいますが、こればっかりは知らぬが地獄です。
個人的には、債務超過の場合の相続は、原則単純相続しない、とした方がよろしいかな、と思います。ちょうど民法改正のタイミングですから、議員の先生には、負の連鎖を生み出さないためにご尽力いただければと思っています。
さて、私の場合は相続すべき資産もないし、債務の額もはっきりしているので、相続放棄を選択した、ということになります。
残る限定相続ですが、こちらは上に書いてありますとおり、相続する資産の範囲で債務を引き継ぐ格好です。つまりはプラマイゼロ、の方式ですね。
放棄は結局だれも相続人がいない、という状況を作ることになりますので、血縁としては、ちょっと寂しい部分もあるんですよね。親父はこの世の誰にも相続されないのかぁ。。という無常観といいますか。まあ仕方ないんですが。
限定相続であれば、一応相続は相続なので、そういったモヤモヤ感はぬぐえますし、相続人がいるとなにかと引き継ぐ手続きが楽でよろしい、ということがあります。
ただ問題なのは手続きの煩雑さ。
放棄は放棄したい人が申述書を書いて出せばよいだけのすごく簡易な手続きなのですが、限定相続は、まず、相続人全員が共同して申述しなければならないんです。連絡つかないような人が一人でもいたらできません。
また、申述書を出して受理してもらうことまでは同じなのですが、そのあと、清算手続きをやらないといけません。となるともうきちんと裁判なんですね。
破産とかと変わりません。資産調べて、負債調べて、、という手続きをしていくことになります。
となるともう仕事の片手間でやるには手続きが重すぎて、弁護士さんお願い、という感じになります。となると、費用もそれなりにかかりますし、とにかく時間が掛かる。
こういう相続とかって早く納めたいですからね、あまり長くかかるのはキツイ。
私の場合は、いつまでも亡くなった人の始末を引きずっていたくない、という気持ちがどうしてもありましたね。やはり近親を亡くすのはつらいことですし、いつまでもそこにモヤモヤしてるのは精神衛生上よろしくない気がしました。
債務超過で資産がなければ、相続放棄も限定相続も何も引き継がないという点では同じではあるのですが、かような手続きの違いもあり、放棄を選択した、わけです。
■相続放棄できる期間は限られている
さて、相続放棄をするには家庭裁判所に放棄をする旨の申述をする必要があります。
この申述、という手続きが相続放棄の手続きになります。
限定相続についてもこの手続きが必要ですが、単純相続については不要です。
なので、手続きをせず放っておくと、単純相続となります。
放っておくと単純相続してしまうわけなので、申述する期間が大事になってきます。
こちら、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければいけません。
民法
第四章 相続の承認及び放棄
第一節 総則
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
子供や配偶者(亡くなった人の妻ですね)は普通亡くなったことをすぐに知りますから、亡くなってから3か月以内に放棄の手続きをしないと、放棄することができないことになってしまいます。
申述できるはあくまで相続人、ですので第一順位の相続人が全員放棄して、次順位に回ってきたような場合は、放棄されて自分が相続人になったことを知った日から3か月以内ということになります。
ちなみに第一順位の相続人は子。第二順位の相続人は親と祖父祖母(直系尊属といいます)、第三順位の相続人は兄弟姉妹です。相続人は第三順位までで、それ以上の人が相続することはできません。
70歳の親が亡くなるような場合だと、第二順位の相続人というのはあまり出現しないでしょうね。年齢的に90歳以上になりますから。最近は長寿の方も多いので無いわけではないとは思いますが。
なので、次順位を考慮するとなると、第三順位の兄弟姉妹、ということになります。(子から見たらおじやおば)実務的には、ここ(おじさんやおばさん)への説明が大変ですね。
ただ、この3か月の縛りですが、放棄という手続きがあること自体を知らないで3か月過ぎたら、もうできない!、ということですから、なかなかにきびしい設定です。
たまたま私はコンサルタントなんて仕事をしているので、このへんの知識があったからよいものの、知らなければウン億の債務をいきなり背負うことになるわけです。
浅い知識で、家族だけ放棄したら知らぬおじさんやおばさんに債務が降ってきた、なんてことにもなりかねません。
これはどうかと思いますよね。
法律でそうなっているので刃向かいようがありませんが。
債務超過の場合は原則相続しない、など法律自体の改正が必要な気もします。
でないと無知による負の連鎖が発生し、何も悪いことをしていないのに借金地獄に陥ってしまうような不幸を食い止めることができません。
立法府である政治家の皆様には、ちょうど民法改正のタイミングでもありますし、その点ご検討いただきたいですね。
※3か月の間に放棄するか判断がつかないような場合は、裁判所に申立てることにより、期間を延ばしてもらうこともできます。
というわけで、四十九日法要が済んだあたりから、具体的に放棄の手続きを始めることにしました。
■放棄手続きの費用と必要資料
相続放棄の申述は、相続放棄の申述書を書き、家庭裁判所に提出することにより行います。
申述先の家庭裁判所は、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所です。なので、申述書を書いたら、必要資料を添付して住所管轄の家裁へ郵送します。
手続きに必要な費用ですが、800円とかなりお安くなっております。
ちなみに収入印紙を申述書に貼ることにより支払います。なので、800円分の収入印紙を購入(郵便局なら間違いなく売ってます)して、申述書に貼ります。
他には連絡用の切手が必要です。それぞれの裁判所によって求められる額、枚数は違うようですが、水戸家庭裁判所の場合は82円を5枚、10円を5枚でした。計460円分です。
そして、申立てに添付する書類ですが、基本的に戸籍謄本です。
本人が役所に行けば取得できますが、戸籍なので、戸籍のある自治体に行かないと取れません。
戸籍と住所地が違うことは多々ありますので、遠方ですと謄本の取得に時間がかかることを頭に入れておきましょう。
以下必要添付書類について裁判所の説明を記載します。
標準的な申立添付書類
※同じ書類は1通で足ります。
※同一の被相続人についての相続の承認・放棄の期間伸長事件又は相続放棄申述受理事件が先行している場合,その事件で提出済みのものは不要です。
※戸籍等の謄本は,戸籍等の全部事項証明書という名称で呼ばれる場合があります。
※もし,申述前に入手が不可能な戸籍等がある場合は,その戸籍等は,申述後に追加提出することでも差し支えありません。
※ 審理のために必要な場合は,追加書類の提出をお願いすることがあります。
【共通】
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票
・申述人(放棄する方)の戸籍謄本
【申述人が,被相続人の配偶者の場合】
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の子又はその代襲者(孫,ひ孫等)(第一順位相続人)の場合】
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人より下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
【申述人が,被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合
(先順位相続人等から提出済みのものは添付不要)】
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人(おい,めい)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
複数相続人がいる場合でも、同じ書類は1通でOKです。
戸籍謄本の取得には、一通450円かかります。改製原戸籍(かいせいはらこせき、と読みます)は750円です。一通で昼めし食えるくらいの金額ですので、なるべく原戸籍は使用しないで資料を集めたいですね。
ちなみに改製原戸籍とは、コンピューター化された今の方式ではない、手書き式の古い戸籍のことです。それぞれの資料について、なんで必要なのか、という考え方はこうです。
・亡くなった人が誰かを証明(被相続人の住民票除票)
・自分が誰かを証明(申述人の戸籍謄本)
・亡くなったのが夫・父であることを証明(除籍謄本)
・亡くなったのが子・孫・兄弟姉妹であることを証明(亡くなった人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本)
・前順位者が死亡していることを証明(直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本)
兄弟姉妹の子も、兄弟姉妹がすでに死亡していた場合は代襲して相続人となります。
この場合、兄弟姉妹の死亡の記載がある戸籍謄本が必要になります。
放棄の場合、基本的に第三順位である兄弟姉妹まで全員放棄しないと、だれかに借金が行ってしまいます。それでもよい、という場合は別ですが、原則、相続人全員が放棄手続きを行いましょう。
■申述書の書き方
申述書は書式が裁判書のウェブサイトからダウンロードできます。便利ですね。
記載例もダウンロードできますので、それを見て書けばまず間違えることはありません。
記載自体は、とてーも簡単なものです。
ちなみに申述書はこんな感じ。
記載例はこんな感じ。
記載内容は基本的に本籍、住所、氏名で、ちょっと面倒なのが負債の額の記入でしょうね。
なので、負債の額については、分かる範囲で調べておく必要があります。
調べる中で出てきた債務の書類などは、コピーをとって、申述書に添付します。
手続き費用の収入印紙800円も忘れずに貼りましょう。
申述書を書き終え、戸籍謄本などを取得できれば、いよいよ家庭裁判所に郵送します。
ひとつ、注意点ですが、相続放棄は基本的に相続人本人が申述(つまりは手続き)する必要があります。代わりにできるのは未成年者の親か弁護士さんだけ、です。
でもですね、亡くなった方が80歳ならば、その兄弟姉妹も当然その近辺のご年齢。
つまりはお爺さんお婆さんです。
このお爺さんお婆さんに相続放棄の必要性を説明し、納得してもらい、ご自身で手続きしてもらう必要があるわけですね。相続人本人が申述しなければなりませんので。
しかし、これはなかなか簡単ではありません。
基本的にお年寄りは、初めて聞くことに拒否反応を示しがちです。
とくに裁判所、なんていうと、余計に面倒で関わりたくないよー的に拒絶されやすいです。
(事実最初におじさんおばさんお話ししたときは、皆さん引き気味でした)
ただ、かといって放っておきますと、単純相続しちゃって債務がどーんとやってくることになってしまいます。協力してくれないから放っておけばいい、という無責任体制もとれなくもないですが、人としてそれはいかんな、という少々難しい状況になります。
なので、放棄しないと借金がきちゃうよー、やばいよー、放棄したほうが「得」だよー(このお得、というのに弱い傾向あり)というのを懇切丁寧に何度も説明し、納得してもらう作業が必要になります。
納得してもらわないとその後の資料集めやらなんやらで時間がかかりますので、「説明」や「理解」よりも、いかに「納得」してもらうかが、その後の手続きのキーになります。
納得していただくには労力を伴いますので、お手伝いする場合は覚悟してかかりましょう。
そんなこともわからんでか、申述書も自署欄が別途設けられています。
裏読みすれば、書いたりするのはまあ他人でもいいから、サインだけはしてよね、という裁判所の意図が見えます。
つまり、本来的には申述人本人しかできないとなってはいるものの、ある程度手伝っちゃってもいいよ、ということですね。裁判所もご高齢の方に対し全部自分でやるのもムリかな、という温情かなとも思います。
■照会書の返送と受理通知
申述書を家裁に郵送すると1週間もたたないうちに、家裁から照会書が送られてきます。
照会書には質問がいくつか書いてありまして、これに応えて返送する、というシステムです。
これまた非常に簡単なものですね。
丸つけて、住所氏名書けばOKです。
ただ、2週間以内に返送せよ、とありますので、この期間だけは守りましょう。
というか「なる早」で返送しましょう。
照会書の意味合いとしては、「自分、放棄していいのね?誰かに言われてやってるんじゃないよね?」ということです。
債務超過なんだからそんなことあるわけないじゃん、とも思いますが、相続は資産があることを前提にした制度のようでして、相続できる資産があるのに放棄すんのか!?みたいなことを心配いただいてくださっているようです。
でちゃらっと書きまして、返送しました。
送られてきた照会書に記入して返送したものがこちら
↓
ちなみに照会書には事件番号がふられています。
この事件番号は申述人毎に異なります。
なので、放棄する人それぞれに個別の事件番号があることになります。
家族の書類作成を手伝うような場合、みな同じ番号ということではありませんので注意が必要です。
これからの手続きにはすべてこの事件番号がキーになりますので、忘れずにメモしておきましょう。(書類はすべてコピーをとっておくことをお勧めします)
さて、照会書を返送してまた1週間もたたないうちに今度は、受理通知書がやってきました。
↓
相続放棄の申述が受理されましたので、とりあえずは、相続放棄の手続き完了です。
申述書と必要書類を集めるのは手間でしたが、申述書提出から受理までの期間は思いのほか早かったです。今回は地方の家裁だったので、案件が少なく、書類到着即手続き、みたいな流れのようでした。
それと、受理通知書には受理証明の取得申請書が同封されていました。
債権者からは受理証明書の提出を求められることが多く、申請書の取得はマストです。
申請書の取得も本人以外は弁護士さんしかすることができませんし、あとでまた手続きするのも面倒なので、このタイミングで申請しておくことにしました。
ちなみに取得申請書には捨印欄もあり、多少の間違いは書記官さんの方で直してくれるというありがたいシステムとなっていました。
これでしたら、家族の申述は手伝うにしろ、証明の取得は個人でしてね、という場合でも取得できないということがなく、いいですね。
さて、申請をすると、1週間もしないで証明書が送られてきます。
これが証明書ですね。
↓
証明書がとれれば相続放棄一連の手続きがすべて完了、ということになります。
ちなみに、相続放棄が認められると、最初から相続人でなかったことになります。
相続人全員が相続を放棄すると、資産がある場合は国庫に入ります。負債がある場合は、回収不能として処理されることになるでしょうか。
このへんは金融機関にいたことがないのでわかりかねますが、あとで銀行の知人に聞いてみますね。
~その他注意点~
相続放棄は、亡くなった人の預金を使ったり、財産を処分したりするとできなくなります。
お墓や葬式の費用として使用した場合は相続したこととならないのでOKですが、普通に預金を下ろして使ったりすると、相続を認めたことになり、放棄ができませんので注意が必要です。
特に固定資産税や所得税、意表をつくところだとNTTの電話加入権ですね、これらには相続したとみなされるような落とし穴がありますので、要注意です。
申請の代理は弁護士さんしかできません。書類作成の代行は基本的に司法書士さん。
血縁が手伝うにしても、あくまで手伝いの範囲にとどまりますので、代理人として申立て等することはできないのでご注意を。
長々と続けてまいりましたが、相続放棄体験記として、実体験からお知らせする相続放棄の実務手続きの注意点は以上でございます。
なお、詳細は裁判所のウェブサイトの説明書をご覧くださいませ。
↓
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html