経営コンサルタントコラム 2012年10月1日号

欠損金繰越期間伸長の意味(4)

◆再生局面における繰越欠損金活用の意味と効果(その2)

 

これまで欠損金を繰り越せる期間は7年間でした。

欠損金を使い切れてなくても、8年目以降は普通に税金を払うわけです。

 

これが9年になったということは、2年分得した、ということです。

前回の計算でいうと2年で960万円!すごいですね。

 

ただし、繰り越せる限度は欠損金の額分(1億円)ですから、

8年間でトータル9600万円(1200万円×8年)損金として使ったとすれば、

9年目に損金算入できる額は、

 

欠損金額1億円-既に損金算入した額の総額9600万円の400万円になります。

 

なので、

9年目については利益1200万円-欠損金残額400万円の800万円に法人税率40%を掛けた320万円、税負担が生じることになりますね。

 

単純計算でいうと2年で960万円得した感じがしますが、

細かくいうと、A社さんの場合は2年で640万円得した、という計算になります。

 

9年とは言わず、1、2年で欠損金を使い切るほど復活できるのであれば、それはそれでとても良いことですし、そういう再生・回復ができるのであればそれがベストです。

しかし、確実な計画を立てるという点で、あまりにもハッピー過ぎる、実現可能性に乏しい計画は信用度に欠け、銀行など債権者の方に対して不誠実なものとなってしまいます。

 

一般的に中小企業の再生計画は10年間での債務完済を目指します(なぜ10年かという点についてはいろいろあるのですが、ここでは割愛します)。

言い換えれば、10年間で完済できる、かつ、実現確度の高い計画が立てられれば再生計画として問題ない、ということになります。

 

A社さんを例にして簡単に弁済計画を考えてみます。

 

利益が1200万円出ていることから逆算して(経常利益率を3%と仮定)、

売上高を4億円、金融債務が売上高の半分として2億円と仮定します。

 

この2億円を10年で完済できればいいわけですから、

まず年間利益から1000万円を返済に充て、10年間で1億円。

減価償却費が年間1000万円あったとして、これを返済にあてれば10年で1億円。

これで計2億円の返済ができます。

 

売上が伸びず、現状維持であったとしても債務を完済できるわけです。

 

では、欠損金を損金算入できなかった場合はどうかというと、

税引き後の利益は、

税引き前利益1200万円×(1-税率40%)=720万円なので、

これを全て返済に充てたとして10年間で7200万円の返済。

 

法人税がない場合は10年間で1億円返済できましたが、それと比べ2800万円足りませんね。

ということはこの足らずの2800万円をどこかで捻出しなければならないことになります。それはコストの削減であったり、売上の増加であったりするわけです。言い換えれば、再生計画がより厳しいものとなるわけです。

 

欠損金を繰り越せれば税負担が減り、その期間が伸長されればよりその効果が活用できることについてご理解いただけましたでしょうか。

 

債務の返済を進めるためには税負担が軽いに越したことはありません。

負担が軽ければ再生計画も立てやすくなります。

再生計画策定の際は欠損金の効果も忘れず盛り込みましょう。

 

池田

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