経営コンサルタントコラム 2013年10月14日号

ポスト倒産回避の経営術(1)

昨今、行政の皆さんの努力により、中小企業の再生について公的支援の窓口が大きく広がりました。再生支援協議会しかり、再生支援センターしかり、ウン十億という予算をかけ、中小企業の再生を支援してくれています。

 

私が中小企業の再生コンサルティングに関わり始めた当時、企業再生というと、普通の人からはよくわからない、ちょっとコワイ、グレーな世界でした。企業再生コンサルというと乗っ取り屋と思われるくらい、世の中的な認知は低いものでした。銀行にいけば怪訝な目で見られましたし、弁護士でない民間のコンサルタントは同席さえ拒まれる程でした(今でもありますが)。

 

銀行は貸し剥がし、商工ローン業者はえげつない回収方法(臓器売って返せとかありましたね)をとっており、社会問題化していました。サラ金破産が増え、借金に関する自殺者も増加していました。バブル崩壊の最後の処理のタイミングでした。 我々のようなコンサルタントは、銀行等の債権者にいいように翻弄されていた中小企業経営者の支援にまわり、倒産を回避すべく、回収に走る銀行やサービサーとの交渉をバックアップしていました。

 

当時はまだバブル崩壊の影響が色濃く、過大な債務が問題の大半であったため、バランスシート上の改善が一番の再生方法でした。倒産回避さえできれば、少ないとはいえしっかり出ていた収益で事業は円滑に回っていきました。

 

あれから約10年。

世の中は変わりました。

 

バブル崩壊の残り香はもうほとんどありません。 過大債務の意味も、縮小する売上に対し相対的に債務が過大となっている、という意味に変わりました。

債権者も、金融円滑化法施行後は返済猶予に柔軟に対応されるようになりました。返済猶予を勝ち取るのに、昔のように債権者と丁々発止やりあうことはもうありません。

 

今年になり、円滑化法は終了しましたが、まだまだこの流れは変わりません。

実際のところはおかしな話なのですが、行政の監督方針上、お金を貸している当人の銀行が、返済を猶予してくれ、再生を支援してくれるという、今の環境です。本来であれば金貸し商売上、必死に(昔みたいに)回収しなければならない局面のはずですが、そのような話は聞きません。

 

実際、実抜(じつばつ)計画とか合実(ごうじつ)計画(詳細な内容はまた別途)とかいう内容に則り作成した返済計画書を出せば、ほとんど間違いなく返済を猶予してくれます。 しかも、この計画書自体を銀行さんが作ってくれることもあります。作成協力せよ、とのお達しです。

 

さらには、再生支援協議会や再生支援センターなど公的な相談窓口、仲介窓口が強化され、管理人員等人的資源の乏しい中小企業でも銀行等と交渉を行えるよう、行政的な支援も行われています。これで返済猶予できないならどうする?というくらい厚い支援体制です。

 

隔世の感があります。

 

しかし、ちょっと待ってください。

これは本当に再生なのでしょうか?再生しているのであれば、街場の景気はもっともっとよくなっているはずです。

 

資金不足による倒産は、返済猶予によって回避できたかもしれません。倒産による雇用の喪失も防げたかもしれません。しかし、それは返済を止めたからであって、お金の出る量を少なくすれば倒産が回避できるのは当然のことです。 キャッシュさえあればどんなに赤字だろうと会社は倒産しません。

 

解決しなければならない課題は、売上が収縮し相対的に過大債務になったことであり、下がった売上で返済資金を賄えない事です。資金繰りが一息ついてやれやれ、という感情になるのもわかりますが、実際のところが何も変わっていなければそれは再生とは言えないのではないでしょうか。

 

正直、出る量を少なくするのにも限界があります。給与や仕入代金を払わないわけにはいきません。銀行や行政が協力してくれるのはあくまで、資金の流出を減少させる、倒産回避です。倒産は免れるけれども、実をいうと本質的な問題は何も解決していません。現状よりも更に売上が減少すれば、返済猶予だけでは対処できない世界に入っていきます。

 

つまり、究極的に言えば、返済猶予はあくまで病気の進行をゆっくりとする、対症療法でしかないわけです。根本的な問題を解決、解消しなければ、売上減少や利益減少に至った問題を解決しない限りは、再生は間違いなくできません。

 

(つづく)

 

池田


 

 

 

 

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