経営コンサルタントコラム 2014年10月12日号

中小株式会社とガバナンス(1)株式会社の意味

■株式会社である意味


会社は誰のものなのでしょう?

社長のもの、株主のもの、社員のもの、地域のもの、社会のもの、いろいろあるとは思いますが、「誰のもの=所有」とすれば、これは間違いなく株主のものです。


そもそも会社とは何かというと、会社法では、「株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう。(会社法2条1項)」とされています。

その中で、出資者から出資を受けるについて、当該会社の株式を付与する会社を株式会社といいます。


合名会社、合資会社、合同会社は持分会社といって、会社の持分を社員が持つ会社です。(ここでの「社員」は通常意味する従業員としての「社員」ではなく、会社の員(加わっている人)という意味です。)


合名会社の場合は、この社員さん全員が無限責任を負います。

合資会社の場合は、社員さんの一部を無限責任、その他を有限責任社員とします。

合同会社は、社員全員が有限責任社員となります。

株式会社は、株式の引受価額(出資分)がその責任の限度とされています。

会社が潰れても、出資分が無くなるだけでそれ以上の責任は問われないわけです。


無限責任となると、例えば会社が潰れて負債が返せなくなった場合、その「社員」も負債を返済する義務を負うことになります。すごく重い責任ですね。

有限責任はというと、文字通り出資の範囲でのみ責任を負えば良い、ということになります。株式会社と同じですね。

株式会社との違いは、出資に対して株式を与えるかどうか、です。


株式というのは、昔は株券の発行が原則でした。

株券を持っている人が株主ですから、株券を譲り受ければ株主になれるわけです。

株主の地位が株券という株式をもって比較的簡単にできるわけですね。


会社の価値が上がれば株式の価値も上がります。価値が上がれば欲しいという人も現れてきます。

欲しいという人にパッと売れる方が取引としては良いですよね。

つまり、株式は譲渡が前提の仕組み、取引されるための仕組みです。


一方、合名会社等の持分会社は譲渡は株式ほど簡単ではありません。譲渡前提の会社ではないのですね。

なので上場というのはありえない会社になります。



■譲渡制限会社


ですが、株式会社でも株式の譲渡を制限している会社があります。

譲渡禁止はその会社の定款で定めれば良いわけですが、株式の譲渡を制限した場合、譲渡したい場合は役員会の承認が必要になります。

日本の中小企業のほとんど全てが、この譲渡制限会社です。


いや、そもそも株式会社は株式を譲渡するための仕組みなのだから、譲渡を制限したら株式会社である意味がないんじゃないか?という疑問が湧きませんか?


そうなのです。


株式会社という形態が譲渡すること前提であるわけですから、譲渡を制限している(そういう前提だから禁止ではなく制限なのでしょうが)、制限したいような会社運営をしていきたいのであればそもそも株式会社である必要性はありません。

譲渡制限するなら株式会社にする意味はありません。


昔は有限会社という会社形態がありました。譲渡制限する場合は株式会社でなく有限会社でよかったわけです。


ただ有限会社法は廃止されまして、基本的にすべてこちらは株式会社となりました。


本来的には譲渡性の相違で会社の形態を選択すれば良いわけですが、どうしても資本金要件(株式会社は1000万、有限会社は300万)の違いで、小さい会社は有限、ちょっと成長したら株式会社、というような「有限<株式」的イメージがあり、積極的に有限会社を選択しない環境でした。


また、株式会社の資本金要件が撤廃(1円でもOK)され、資本金で差をつけることができなくなったこともあり、有限会社は姿を消しました。(今残っている有限会社は特例有限会社と言って、有限とは名が付いてますが、実は株式会社です。)


しかし、そもそもは譲渡性を有しなくても良いような会社形態はやっぱり必要なわけで。


海外ではLLC(Limited Liability Company:リミテッド ライアビリティ カンパニー。有限責任会社)という制度があること等を鑑み、持分会社中の社員全員が有限責任の会社である合同会社の設立が可能となりました。今いまの有限会社は合同会社、ということになります。


株式を譲渡することのないような、つまりは譲渡制限をかけるような会社は株式会社である必要はありません。有限責任であることはリスク上必要でしょうから、合同会社でいいわけです。


また、株式会社の特長として、所有と経営の分離、ということがあります。


所有者(株主)が替わることが前提の会社ですから、経営も一緒に替わらないよう分離されています。つまり、株主=代表、ではないのですね。


合同会社や合名会社などの持分会社は、出資者=社員(株式会社でいうところの取締役)で、所有と経営が一緒になっています。


(つづく)

 

池田

 

 

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