経営コンサルタントコラム 2014年10月3日号

今後の銀行動向を探る~金融庁の監督方針から

先月、金融庁から平成26年度の金融モニタリング基本方針が発表されました。


金融モニタリングの基本方針、ということですので、銀行の監督官庁である金融庁が銀行を指導する際の方針を明らかにしたものです。つまりは、「こういうところを見ていくので、…わかってますよね?」的、銀行に対するご指導です。


というわけなので、この基本方針を見て行けば、今後銀行さんがどのような考えでどう動いていくかがある程度想像できることになります。


銀行さんは事業経営上の大切なパートナーでもありますが、いざとなれば債権者として牙を剥いてくるちょっと面倒な相手でもあります。


バブル崩壊時にありましたよね、「貸し剥がし」。時代の流れとしては仕方ないのですが、流れを掴んでおかないと、ああいうことで自分の会社を潰すことになってしまいます。銀行さんの動向というのは常にチェックしておくに越したことはありません。


さて、この基本方針、早速見ていくこととしましょう。


監督にあたり26年度の考え方は


「デフレ脱却と好循環の実現」

「金融システム・金融機関の健全性の維持」


顧客の成長→安定的な収益確保→金融仲介機能を発揮→顧客の成長


という好循環を創り出したい、ということのようですね。

また、金融仲介機能を発揮するために、健全性を維持せよ、という考え。


で、実際の施策として何を見ていくかというと、こちら9つありまして、


1.顧客ニーズに応える経営

  →優越的地位の乱用や利益相反ないか?

2.事業性評価に基づく融資等

  →財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、事業の内容、

   成長可能性を適切に評価し、融資や助言を行うための取組をしているか?

3.資産運用の高度化

  →金融機関の役割、責任を果たしているか?経営姿勢は?リスク管理してるか?

4.マクロプルーデンス

  →グローバルな経済動向や市場に与える影響を考慮してるか?

5.統合的リスク管理

  →大口以外は銀行の判断を尊重

6.ビジネスモデルの持続可能性と経営管理

  →人口減少等事業環境が変化するなかで持続可能なビジネスモデルであるか?

7.顧客の信頼・安心感の確保等

  →セキュイリティの確保、反社マネロン対応の取組できているか?

8.東日本大震災からの復興の加速化

  →二重ローン問題への取組、事業再建への支援できているか?

9.公的金融と民間金融

  →公的金融と民間金融の競合補完状況について把握し、議論する。


となっています。


「担保とか言ってないで貸しなさい、また、貸す方法を考えなさい。」

「できないんだったらビジネス的に継続しないだろうから、合併でもする?」


と言っているよう読めますね。

地銀さんとか信金さんとかにメガバンク以外の金融機関にとってはかなりきびしい内容に思えます。どうやって事業性を評価するんでしょうね。


また、中小・地域金融機関に対しては、「地域経済産業の成長や新陳代謝を支援せよ」と言っています。細かく言うと、

- 様々なライフステージにある企業の事業内容や成長可能性などの適切な評価を踏まえた

解決策の検討・提案、支援の実行。

- 事業性評価を重視した融資や経営改善・生産性向上等への支援強化(地域経済活性化

支援機構の積極的な活用)。

- 特に、地域金融の中核的な担い手となっている地域銀行等は、地域経済の活性化に向け

た取組みを主導する役割を発揮。

せよ、とのお達しです。


更にいうと、

「人口減少が予測される中、5~10年後を見据えた、中長期的に持続可能なビジネスモデルを構築せい」とも書いてあります。そして健全性の確保。


つまりは先にも述べたように、


そのままではそんなに金融機関は要らなくなるから、統合とか考えないとね。

そうならないように、地域経済盛り上げるような貸し方考えてね。


と言っているわけですね。


しかし、これは借りる側にとって悪い話ではありません。

国としては、担保とか言ってないでどんどん貸せ、ということですから。


ただ、既に借りている側はそういい話だけとは限りません。


「新陳代謝を支援」とは、再建の見込みがないところをいつまでも放っておくな、処理せよ。ということを意味していますので、リスケして生きのびているけど、返済は無理そうな会社さんは手を引かれる可能性があります。


手を引かれるイコール、リスケ認めず、ということですので、期限の利益を喪失→一括請求→差押という流れになります。


何も交渉しなければ手形も使えなくなるでしょうから、資金繰りが一気に悪化します。

手もとにお金が無い会社さんは事業継続が難しくなるのではないでしょうか。


きちんとした事業計画なり改善計画なりを出しているところに対しては、そこまで急激な変化はしない(新陳代謝を促す一方、支援しろとも言っているので)と思いますが、とりあえずリスケだけしていて、計画などなにも出していないような会社さんは、上記のような資金繰り悪化の状況が訪れることを覚悟しておかないといけないかもしれません。


今回のモニタリング基本方針を見る限り、金融機関に返済を棚上げしてもらっているだけで、その後何の返済計画も出していない会社さんは急いで金融機関の担当者に連絡とって、返済計画を明示したほうが良さそうですね。おすすめします。


しかし銀行さんも辛い時代に入りました。

事業性評価なんていったいどうやってするのでしょうか。。

できない課題を突き付けて、統合のレールを引いた、というのは穿った見方ですかね?


会社さんにとっては中長期戦略をきちんと立て、金融機関に説明する能力が求められそうです。


池田

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