事業再生コンサルコラム 2023年6月24日号

IT補助金を使うには?(システム屋さん視点で)

IT補助金とは

事業再生コンサルのコラム、今回はちょこちょこお話をいただくIT導入補助金について。

 

3月末から申請受付が始まったIT導入補助金も来月7月末で一区切り。

6月の下旬現在では、通常枠・セキュリティ対策推進枠ですと3次締切、デジタル化基盤導入類型は5次締切、商流一括インボイス対応類型では1次締切の日が、7月10日に迫っている状況です。

また、各4次、6次、2次締切が7月31日となっていますね。

 

長らくある補助金ですので、IT導入補助金を知らない、聞いたこともないというかたは少ないと思いますが、念のためどういう補助金かといいますと、中小企業や小規模事業者のかたがITツールを導入する際の経費の一部を補助してくれるものです。

申請枠・類型により様々ですが、補助金額は5万円から450万円まで、補助率は1/2~3/4となっています。

(IT導入補助金HPより)

 

以前はPCやプリンターなどのハードウェアは補助対象外だったのですが、最近になってこちらも対象となりました。補助上限は10万円と金額は限られますが、あるに越したことはないですよね。

 

 

クライアントにIT補助金を使いたいといわれたら、、

 基本的にこのIT導入補助金、システム屋さんが営業する際に「補助金使えますよ!」を売り文句にする使い方が一番多い活用方法でした。

ですが、ここ最近の補助金ブームもあってからか、システム屋さんよりもユーザー会社の方が情報に聡く、「補助金使えるなら検討したい」「補助金は使えないの?」などと言われるようです。時代は変わりました。

 

営業というより実務制作中心のシステム屋さんですと、その辺のキャッチアップもなかなかできておらず、「えー、うちそんな補助金とかできんのかなー」「どうすれば補助金使えるの?」と疑問・不明がパラパラと出てくるところでしょう。

 

ちなみにIT導入補助金の仕組みとしては以下図のとおりです。

(IT支援事業者登録の手引きより)

 

事業目的は、

 

『中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革、被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイスの導入)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が生産性の向上に資するITツール(ソフトウェア、サービス等)を導入するための事業費等の経費の一部を補助等することにより、中小企業・小規模事業者等の生産性向上を図ることを目的』

 

とのこと。

 

ざっくりいうとITツール導入経費を補助しますよー、ということですね。

ちなみにここでのITツールとは、

 

『本事業においてIT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に事前登録された中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上に資するソフトウェア・オプション・役務・ハードウェア(一部のハードウェアと、複数社連携IT導入類型向けのITツールは事前登録不要)の総称。通常枠(A・B類型)、デジタル化基盤導入類型、セキュリティ対策推進枠の申請要件に合わせて、申請できるITツールは異なる。』

 

です。

 

ツールの内容はまた細かく決められていて、それにより補助額も変わったりしますので、申請の際は公募要領や登録要領をよく見て対応してください。各要領はIT導入補助金のホームページからダウンロードできます。

https://www.it-hojo.jp/

 

さて、上の仕組み図のとおり、システム屋さんが、IT導入補助金を希望するクライアントに対応するためには、まず自らがIT導入支援事業者にならないといけない、という話になります。

前話が長くなりましたが、今回は、こちらの登録方法、IT導入支援事業者になる方法について解説していきたいと思います。

 

IT導入支援事業者になるには

まず、IT導入支援事業者とはなんだろな、という定義のお話から。

登録要領には、

 

『ITツールの導入により生産性の向上を目指す中小企業・小規模事業者等と共に事業を実施するパートナーとして、中小企業・小規模事業者等に対するITツールの説明、導入、運用方法の相談等のサポート、及び補助金の交付申請や実績報告等の事務局に提出する各種申請・手続きのサポートを行う事業者。事務局に登録申請を行い、事務局及び外部審査委員会による審査の結果、採択される必要がある。』

 

とありますので、ただシステムを作ったり売ったりするだけじゃなく、諸々サポートしないといけないようですね。つまりは、IT導入支援事業者になったからには、補助金申請サポートの役割も担え、ということです。逆にいうと、その役割が負えないような事業者はIT導入支援事業者にはなれません、ということでもあります。

 

あと、基本的に法人である必要があるので、個人事業主のシステム屋さんはどこかしかの法人とコンソーシアムを組んで登録申請をする必要があります。

 

法人格の話が出たところで、具体的な登録要件がどういうものかを見ていきましょう。全部で21項目あります。長いですので、ざっと飛ばし読みいただいてもOKです。

 

① 登録申請時点において、日本国内で法人登記(法人番号が指定され国税庁が管理する法人番号公表サイトにて公表されていること)され、日本国内で事業を営む法人であること。

②安定的な事業基盤を有していること。

③登録申請に必要な情報を入力し、添付資料(本要領「4-2 申請項目・必要書類」参照)を必ず提出すること。

④経済産業省又は中小機構から補助金等停止措置又は指名停止措置をうけていないこと。

⑤反社会的勢力に該当せず、今後においても、反社会的勢力との関係をもつ意思がないこと。

⑥登録申請時点のみならず、補助事業実施期間中においても、訴訟や法令遵守上において、補助事業遂行に支障をきたすような問題を抱えていないこと。

⑦中小機構が実施する補助事業において、「虚偽の申請」や「利害関係者への不当な利益配賦」といった不正な行為を行っていない(加担していない)こと。また、今後も不正な行為を行わない(加担しない)こと。

⑧事務局及び中小機構は、交付申請や実績報告時において補助事業の適正な遂行のため必要があると認めたときは、交付規程第32条に基づく立入調査等を行うこととし、調査への協力を要請された場合は協力すること。協力しない場合は交付決定の取消しや補助金返還となることに同意すること。

⑨本事業の対象要件を満たすソフトウェア、それに類するサービスを提供・販売した実績を有していること。

⑩事務局が定める要件を満たすITツールを登録及び提供できること。

⑪事務局に登録申請を行うITツールが生産性向上に資するよう、最大限の効果を発揮するための環境・体制等の構築を行うこと。また、補助事業者が導入したITツールにおいてデータ連携不全や運用障害等が発生しないようメンテナンス及び管理を徹底すること。

⑫本事業の公募要領・交付規程等に記載の内容を遵守することができること。また、補助事業者に対し、本事業の公募要領・交付規程等に記載の内容を十分に説明し、理解を得た上で交付申請を行わせること。

⑬事務局に提出した情報は、事務局から国及び中小機構に報告するとともに、事務局、国及び中小機構(各機関から委託を受ける外部審査委員や業務の一部を請け負う専門業者等を含む)が以下の目的で利用することに同意すること。なお、補助事業者からの情報提供を受けIT導入支援事業者が提出する情報については、予め補助事業者の同意を得ておくこと。

一 本事業における審査、選考、事業管理のため

二 本事業実施期間中、実施後の事務連絡、資料送付、効果分析等のため

三 統計的に集計・分析し、申請者を識別・特定できない形態に加工した統計データを作成し、公表すること(交付規程に規定する事業実施効果の報告の内容は除く)

四 各種事業に関するお知らせのため

五 法令に基づく場合

六 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、IT導入支援事業者の同意を得ることが困難であるとき。

七 事務局、国及び中小機構が本事業の遂行に必要な手続き等を行うために利用する場合

⑭各種情報セキュリティ認証の取得状況について公表することに同意すること。

⑮本事業の各種手続きにおいて登録する情報及びメールアドレス(補助事業者のものも含む)は、虚偽なく正確な情報を提出し、変更や修正の必要性等が生じた場合は、IT事業者ポータルより情報変更の手続きを行うこと。※本事業に係る大切なお知らせや各種申請の結果、通知等は原則、登録されたメールアドレス、もしくはメールアドレスに基づき付与されたIT事業者ポータルサイト及び申請マイページに連絡することになるため、正しい情報、メールアドレス等が登録されていなかった場合、IT導入支援事業者の登録取消し及び補助事業者の交付決定の取消しとなる場合がある。

⑯事務局より付与されるIT事業者ポータルを使用し本事業に係る申請、各種手続き等を行うため、IT事業者ポータルに係るログイン ID 及びパスワードは、社外の第三者等への開示・提供は行わず責任をもって適切に管理すること。

⑰ITツールの導入を検討する事業者からの問合せに対応する等、本事業ホームページや公募要領、各種手引き等を充分活用するとともに、事務局が実施する説明会や経済産業省及び中小機構等が関与する本事業関連施策に可能な限り連携し、補助事業の周知活動に取り組むこと。

⑱補助事業者に対し、デジタル化支援ポータルサイト「みらデジ」の積極的な活用を促す等、デジタル化を通じた経営課題解決や生産性向上支援に取り組むこと。

⑲補助事業者に対し、申請マイページ作成、各種申請、及び手続き等における虚偽や不正、業務の怠慢、情報の漏洩等並びにその他不適当な行為が行われていることが明らかになった場合は交付決定の取消しとなる場合がある旨を交付申請前に説明を行い、同意を得ること。

⑳本事業実施期間のみならず、補助金の交付以降も補助事業者への十分な支援(導入支援、定着支援、活用支援、フォローアップ)を行える体制を整えること。また、補助事業者からの問合せや相談、苦情対応について迅速かつ適切に対応し、導入したITツールのサービスについて、より高度かつ利便性等の向上を実現するための利活用推進に係る取組(ツール等のより高度な利用方法や、利便性を向上させる情報分析の方法のレクチャー等)を実施すること。

㉑ 補助事業を遂行する上で、補助事業者及びその他の事業者との間に発生する係争やトラブルについては、事務局ではその責を一切負わず、IT導入支援事業者と補助事業者及びその他の事業者間で対応し、解決すること。

 

はい、すべて読まれた方はお疲れさまでございました。

そうでないかたは、②安定した財務基盤、⑨実績、⑩ITツール、⑪⑳体制、がポイントだということを押さえておいていただければと思います。

 

つまり、

 

・債務超過であったり

・できたばかりの会社や

・まったく新規の事業

 

だったり

 

・登録足り得るITツールがない

・法人ではあるが社員数が少ない

 

場合は、IT導入支援事業者登録の審査が通らない可能性が高いです。

 

詳細な審査基準は明らかにされていないのでわかりませんが、最低限、「登録足り得るITツールを持った法人で実績もあり、組織体制も整っている」必要はあるかと思います。

 

ここで登録足り得るITツール、の内容について、お伝えしましょう。

ITツールとして登録可能なものは、『中小企業・小規模事業者等(補助事業者)の業務生産性向上に寄与する「ソフトウエア」・「オプション」・「役務」・「ハードウェア」』になります。

(IT導入補助金HPより)

 

まず、ソフトウェアは必ず登録申請できねばなりません。

なので、PCは売ってるけど、ソフトウェアは取り扱ってないんだよなー、とか、ITコンサルやってるけどソフトウェアは売ってないんですーな会社さんだと支援事業者にはなれません。

ソフトウェアさえ登録できれば、コンサルとかハードウェアとかの登録も可能です。

 

一番重要なソフトウェアですが、どのようなものでもよいかというとそうではありません。

詳細ボリュームがあるため、登録要領( https://www.it-hojo.jp/r04/doc/pdf/r4_tool_guidelines.pdf )別紙の記載を確認いただくとして、以下図でまとめられた内容となっています。

(ITツール登録要領より)

 

この業務プロセスを有するソフトウェアを持っていないと、IT導入支援事業者の要件、ITツールの登録ができないので要注意です。

とはいえ、たいていの会社や事業に関わるソフトウェアは当該業務プロセスを含んでいるかと思いますので、そう多くの問題は起きないかと思います。

 

まずはそのソフトウェアが一番大事ですね。システム屋さんが自社で持ってなければ、クライアントに導入したい当該ソフトウェアの代理店等になり、正当な販売権や取扱い権を確保する必要があります。

 

自社で持っていたとしても、スクラッチのワンオフものはツールとして認められません。というのも、一般に販売されている、という要件も課されているためです。また、ECサイトやHP制作、アプリ制作なども対象外です。

ですので、スクラッチ開発するシステムでIT導入補助金を使うことはできません。システム屋さんからするとこの点は使いにくいところかもしれませんが、ものづくり補助金や事業再構築補助金ではシステム開発費も対象となりますので、売上拡大や雇用創出につながるようなシステムの企画があれば、そちらの補助金でチャレンジしてみるのもよいかもしれませんね。

 

 

以上、駆け足ながらそこそこの距離を走った感じですが、いかがでしたでしょうか?

最後にざっくりまとめますと、

IT導入補助金を使うならIT導入支援事業者にならなくてはならず、

IT導入支援事業者になるには、ITツールの登録や実績やら体制やら要件がいるよ、

ということございます。

 

中小システム会社のかたにとっては、対応なかなか難しいところもあるかと思いますが、ご検討の一助といただければうれしいです。

 

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