納税を免れるために、偽りその他不正の手段を行うことを脱税といいます。
買っていないものを経費としたり(経費の水増し)、売上金額を実際より少なくしたり(売上の過少申告)、在庫を少なくしたり(結果、原価が増え所得が減る)するのがその手段です。
脱税の発覚は税務調査による場合がほとんどです。多額の税金を悪質にごまかしている疑いがある場合、国税局の査察部(いわゆる「マルサ」)が査察調査に切り替わります。マルサは調査結果をもって検察に告発、その後検察による捜査が行われます。
まずは、本来納めるべき税金との差額を追徴税として納めなければなりません。さらに過少申告加算税(15%~30%)、重加算税(35%または40%)を課された上、期限までに本来の税額を納めていないため、その期間に応じて延滞税(2.4~8.7%)と利子税(0.9%)がかかります。(1億円の所得隠しなら諸々5754万円。本来の税額のほぼ倍)
ちなみに、脱税絡みの納税資金を融資で調達しようとしても銀行は貸してくれません。
金額が大きく悪質であると判断されると、税金を納めるだけでなく、逮捕・拘留、(在宅)起訴といった刑事手続きに移行します。有罪となると、法人税の場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこの両方の刑罰を科されることになります。なお、懲役の平均は1年1.6月となっています。
一旦査察が入ると74.1%が告発され、これが起訴された場合(告発の7割程)の有罪率は100%となっています。裁判までいってしまうと無罪となる可能性はありませんので、査察が入ったら半分以上の確立で懲役です。(反省し、納税を済ましていると執行猶予がつくこともある)
令和5年6月に国税庁から発表された「令和4年度査察の概要」によれば、法人税については、告発件数が47件、加算税を含む脱税額の平均は9096万円となっています。加算税70%を割り戻すと本来納めるべき5035万円を脱税した場合、告発されたことがわかります。税率を勘案すると所得隠しが1億円を超えると逮捕されると思っておきましょう。
会社経営は山あり谷あり。悪い時に備えていい時はなるべく貯め込んでおきたい、税金もできるだけ払いたくないのも人情です。
しかしいざ事件となれば金融機関からはそっぽを向かれ、下手をすれば貸しはがしに遭い、資金繰りに窮することになります。コンプラにうるさい取引先なら取引契約を解除されるかもしれませんし、脱税はリスクが高過ぎ、割に合いません。
もちろん、無駄に税金を払う必要はなく、資金を残すためにも節税は大切です。法令や動向をしっかり見極め、間違っても脱税とならぬよう、慎重に対処してまいりましょう。
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池田ビジネスコンサルティング
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