経営コンサルタントコラム 2017年3月15日号

酒とネットと免許と会社

お久しぶりです。池田です。

前回のコラムから少々時間が空いてしまいました。

 

さて、今回はお酒のネット販売の謎についてのお話です。

 

お酒好きな皆さんは、アマゾンなどのインターネット・ショッピングサイトでビールなどのお酒を買ったことがあるでしょう。(私もよく買います)

 

ネットで買えば、24缶入りの重たいケースをえっさほいさと家まで担いで帰る必要もなく、宅急便屋さんが自宅まで配送してくれます。なんとラクチン。(昔は近所の酒屋さんが持ってきてくれたものですが)

 

この便利なお酒のネット通販、実を言うとキリンやアサヒ、サッポロなどのメジャーなものは直接には扱えないんです。スーパードライや一番搾り、モルツはもちろん、金麦だってダメ。

 

お酒というのは販売が免許制になっておりまして、通販で売るなら通信販売酒類小売業免許が要るのです。通販免許があれば、お酒を通信販売で直接売れるわけですが、売れない。

 

これからネットショップ開いてお酒売ろうなんて考えている酒屋さん、ネットでビールは売れないんですよ~。

 

しかし?ですよね。売れるのに、売れない。。なんじゃそりゃ、です。

 

というのも、実は、通販免許で売れるお酒は決まっておりまして、

 

・出荷量が年3000キロリットル未満の製造者のお酒

・輸入酒

 

この2つしか売れません。

 

3000キロリットル未満というと、500ML缶で600万本いっちゃいけません。

一升瓶なら166万本を超えてはいけません。

一見、すごい量のように見えますが、価格換算してみますと、その規模がイメージしやすいです。

 

500缶1本の値段が400円として、24億円

一升瓶1本の値段が1800円として、約30億円

 

この値段は小売り価格ですから、実際はこの半分以下でしょう。

となると、売上としては中小企業ですね、地方の酒蔵とかのイメージ。

 

ビール大手4社の売上を見ると、

サントリー 2兆6867億円

キリン 2兆1969億円

アサヒ 1兆8574億円

サッポロ 5337億円

 

はい。そんなレベルではありませんね。

つまり、CMでやってるようなメジャーなお酒は通販で売れないわけです。

 

そもそもなんでこんなことになっているかというと、

 

===============================

酒税法 10 条 11 号関係の要件(需給調整要件)

酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の販売

業免許を与えることが適当でないと認められる場合に該当しないこと

===============================

 

となっておりまして、「適当でないと認められる場合に該当しない」(=認める。面倒くさい言い回しですねぇ。。)ものとして、3000キロリットル未満の製造者の酒、輸入酒をあげているのですね。

 

酒税の保全上、というのが表面的な理由となってますが、「通販でビール売っちゃったら、町の酒屋はおまんま食い上げだろ!いかんいかん」ということで、基本通販で酒売るな、という方針なんだろうなと思います。(利権か!?)

 

ただ、禁止はあまりにもなんで、小さい酒蔵や地元ビールみたいなの(つまりは一般流通でないもの)に限って許してやるよ、という内容になっています。そのくらいのサイズなら、全体に大きな影響はないから、というところでしょう。

 

でも、ビール売ってますよね、アマゾンが直で。

 

おかしいと思いませんか?便利ですけれど。

ぜんぜん守られてないです。町の酒屋さん。

 

売っちゃダメ、という規制になっているのに、売ってるというこの矛盾。

しかしなぜ売ることができるのでしょう?

 

実は抜け道があるんです。

 

この通販に関する規制、というか通販独自の免許ができたのが平成元年。

それまでは通販と普通の小売の区別が無かったんです。

 

なので、昭和年代の免許を持っている人や会社は通販でもスーパードライ売れちゃうんですね。

 

せっかく通販を規制して小規模酒屋を保護しようとしたのにこれじゃ意味がないのではないか、と考えてしまいますが、町の酒屋さんは個人事業主での営業が大多数で、個人事業主ですから、その個人が亡くなってしまえば免許は無くなるわけで。つまりは自然に無くなっていくんですね。

 

もちろん相続はできます。といってもあくまで個人ですから、商売の規模は限られ、需給バランスに影響をあたえるような騒ぎにはならないと予想できます。

 

また、個人から会社に衣替えする場合(いわゆる法人成りですね)は、新規の取り直し扱いになりますので、法人化して昔の「なんでもOK」カードを継続して使うことはできません。

 

「個人営業の小さいところは残すが、会社でバンっと資本入れて大きく商売するようなことはできんぞ、わはは」という役人様の高笑いが聞こえるようです。

 

しかし、そこに漏れがありました。

 

少数ながらも法人でやっている酒屋さんもいたんですね。(たぶん、ほとんどが有限会社だと思いますが、会社法の施行で有限会社が無くなり、株式会社に一本化されましたので、過去の法人は皆株式会社ということになります。)

 

この数少ない、法人で免許を取っている酒屋さんに注目した頭の良い人達がいました。

 

昭和の免許を持っていれば、ビールが通販で売れるわけです。

ネットで“売れる”お酒が売れるわけです。

 

でも、免許の譲渡はできない。

 

そこで考えついたのが、M&A、株式の譲渡による会社の買収です。

 

免許を持ってる会社の株を買って、子会社化した上で、所在を変更し、役員を替え、代表を替え、商号を変えることで、会社そのものは従前のままでも中身はまるっきり新しい会社で、しかも持っている免許は昭和時代のなんでもOKカード。事業の譲渡だと新規の取り直しになってしまうので、株式譲渡の方法でやると。

 

はい、抜け道です。

よく考えましたね。

 

ただ、法人で酒屋をやっていたところはなかなかないわけでして、そう簡単に見つかりません。しかも会社譲ってーという話なので、廃業含み。これは希少です。

 

そもそも法人で免許持ってたなんていうところは、そこそこ手広にやっていたはずですし、そんな売却なんて話になりづらい事情があります。

 

しかし、アマゾンさんは見つけてきたんですねー。

法人ごと買収し、今のアマゾン直販ができるようになりました。

 

さらにいうと、イトーヨーカドーやイオンも同様の手法を用いてお酒のネット直販をやっています。ヨーカドーさんは古くから持っていた自前の免許を活用したようですね。

 

ついては、今現在、普通にアマゾンやヨーカドーなどはネットでお酒を売ってます。

この現状を見るに、しかももうその流れを変えられない現実を考えると、酒類販売免許制度はもうやめてもいいんじゃないか、と思ってしまいます。

 

そもそも酒を販売するだけで、副次的にものすごい面倒な事務手続きがあるのも解せません。第一、税務署が産業を管轄するっていうのも意味不明です。

 

もうそういう世の中でないですし、すでに現実が過去の制度・仕組を凌駕してしまっています。

 

税を取ることばかり考えていないで、産業の振興にもっと視点を向けて欲しいものですし、徴収も大事ですが、どう使うかのほうが断然重要です。(こちらはこちらで問題ないわけではないですが)

 

ただ、酒ばかりの話ではありません。

あらゆる免許、許可関係にはこういった話が応用できるでしょう。

 

建設業や飲食業、風営法などなど、許可の関係でやりたい仕事ができない、なんて思っていた方は、ご自身の業界の許認可について、今一度勉強してみてはいかがでしょうか?もしかしたら、良い方法(抜け道)があるかもしれませんよ。

 

次の記事会って話す。

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