2026年1〜5月、30年ぶりの最多件数を更新
東京商工リサーチが2026年6月8日に公表したデータによると、同年1〜5月の飲食業倒産件数は411件(前年同期比2.2%増)となり、1997年以降の30年間で最多だった2024年同期の408件を上回り、過去最多を更新しました。
コロナ禍が明けてからも飲食業界の倒産が落ち着く気配はなく、食材費・人件費・光熱費の上昇、価格転嫁の困難さ、客数の伸び悩みという複合的な要因が、特に小規模・零細の飲食店を直撃しています。
| 倒産原因 | 件数 | 前年同期比 |
| 販売不振 | 342件 | +0.2% |
| 事業場の失敗 | 24件 | +33.3% |
| 既往のしわ寄せ | 22件 | +46.6% |
| 物価高関連 | 69件 | +43.7% |
| 人手不足関連 | 28件 | +100.0% |
| うち人件費高騰 | 20件 | +566.6%(6倍) |
最多原因は依然として「販売不振」(83.2%)ですが、今回最も注目すべきは「人件費高騰」による倒産が前年同期の6.6倍という急増ぶりです。
2024年・2025年と続いた最低賃金の引き上げにより、特に人手を多く必要とする飲食業においては、人件費の上昇が経営を直撃しています。価格転嫁を試みれば客離れを招くリスクがあり、価格を据え置けば採算が悪化するという二律背反の状況が続いています。
業種別では専門料理店が122件(前年同期比18.4%増)で最多でした。内訳を見ると、居酒屋(酒場・ビヤホール)が98件(同38.0%増)、ラーメン店が28件(同33.3%増)、日本料理店が31件(同19.2%増)と、いずれも大幅な増加を示しています。
居酒屋業態は客単価の引き上げが難しく、フードコストと人件費の双方が上昇する中で採算悪化が深刻です。ラーメン店についても、食材費(小麦・豚骨等)の高騰に加え、一人あたり提供時間が短いため値上げ余地が限られ、経営を圧迫しています。
資本金1千万円未満の倒産が373件(全体の90.7%)を占めており、経営体力の乏しい小・零細規模の飲食店に被害が集中しています。
これらの事業者はコロナ禍の借入(いわゆるゼロゼロ融資)が残存しているケースも多く、返済負担と物価高が重なって資金繰りを悪化させているとみられます。
負債額別では「1千万円以上5千万円未満」が314件(76.3%)と最多で、小規模倒産が中心です。形態別では破産が388件(94.4%)と圧倒的多数を占め、再建を断念した事例が多いことがわかります。
地区別では近畿が144件(35.0%)で最多となっています。関東は103件で前年同期比12.7%減となった一方、9地区のうち5地区で前年を上回っており、全国的な苦境が続いています。
今回のデータが示す問題は、単なる景気循環ではなく、構造的な収益力の低下です。具体的には以下の二点+アルファが絡み合っています。
第一に、価格転嫁の限界です。食材費や光熱費の上昇分をメニュー価格に転嫁すると客離れが生じやすく、特に近隣に競合が多い立地では値上げが困難な状況が続いています。
第二に、人件費上昇への対応余地の狭さです。最低賃金の引き上げは今後も続く見通しであり、省力化投資や業務効率化への対応が急務です。しかし、小・零細規模の事業者では投資余力そのものが乏しく、対策が後手に回りがちです。
+アルファとして、コロナ借入の返済本格化です。2020〜2022年にかけて活用されたゼロゼロ融資の返済が本格化する中、売上回復が不十分なままの事業者では資金繰りに余裕がなくなっています。
このような環境下で飲食業の経営を維持・改善するためには、損益の「見える化」と早期の意思決定が不可欠です。特に、以下の点について定期的に確認することが重要です。
まず、FLコスト(食材費+人件費)の把握と管理です。
一般的にFLコスト比率は60〜65%以内が目安とされていますが、現状を正確に把握できていない事業者も少なくありません。
次に、キャッシュフローの管理と資金ショートの予防です。
利益が出ていても借入返済が重なれば資金が底をつくことがあります。月次での資金繰り表の作成・管理が求められます。
さらに、事業の選択と集中です。
複数店舗を展開している場合、不採算店舗の整理や業態転換を早期に検討することが、全体の経営体力を守ることにつながります。
こうした状況に一つでも心当たりがある場合は、早めに専門家への相談をご検討ください。