2026年4月の企業倒産が過去10年で最多水準── 物価高倒産が初めて100件を突破、中小企業の資金繰り悪化が続く

2026年4月の全国企業倒産件数は899件となり、5カ月連続で前年を上回りました。「物価高倒産」は集計開始以来初めて100件を突破し、中小企業・小規模事業者を取り巻く経営環境の厳しさが数字に如実に表れています。

 

帝国データバンク(TDB)が2026年5月13日に発表した「全国企業倒産集計 2026年4月報」をもとに、事業再生コンサルタントの視点からポイントを解説します。

 

参照:帝国データバンク「全国企業倒産集計 2026年4月報」(2026年5月13日発表)

https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/aggregation/20260513-bankruptcy202604/

次回データ発表:2026年6月8日(月)13:30予定

2026年4月の倒産動向:5カ月連続で前年を上回る

2026年4月の企業倒産件数は899件(前年同月826件・前年比8.8%増)で、4月としては過去10年で最多の水準です。2026年1〜4月の累計件数も3,536件(前年同期比7.2%増)と増加傾向が続いており、単月の数字だけでなく、年間ベースでも増勢が定着しつつあります。

 

負債総額は1,121億3,700万円(前年同月比11.5%増)と2カ月連続で前年を上回りましたが、負債1億円未満が全体の77.1%を占めており、「大型倒産の急増」というよりも「中小・零細規模の倒産がじわじわと積み上がっている」という構図です。

 

物価高倒産が集計開始以来初めて100件を突破

今回最も注目すべきデータは「物価高倒産」の急増です。

 

2026年4月の物価高倒産は108件(前年同月71件・52.1%増)と、2018年の集計開始以降で初めて100件の大台を超え、過去最多を更新しました。

 

物価高倒産の要因内訳

物価高倒産の要因を内訳で見ると、以下のとおりです。

 

・原材料価格の高騰:63件(最多)

・人件費の上昇:24件

・エネルギーコストの高騰:16件

 

仕入れ・人件費・光熱費という企業経営の基幹コストが、三方向から同時に上昇しているのが現状です。

なぜ中小企業は価格転嫁できないのか

本来、コスト上昇分は販売価格への転嫁で対処すべきですが、現実はそう単純ではありません。帝国データバンクの調査では、中小企業の価格転嫁率は42.1%にとどまっています。取引先との力関係、「値上げしたら客が離れる」という心理的障壁、長年の取引慣行──こうした要因が重なり、コスト増を自社で吸収し続けることを余儀なくされている中小企業が多く存在します。

 

今後については、中東情勢を背景とした原油・ナフサの供給不足が新たな懸念材料として浮上しています。国内製造業の約3割(約4万7,000社)がナフサ関連産業に携わっており、原材料コスト上昇の波がさらに広がる恐れがあります。

 

業種別動向:サービス業・建設業が高水準で推移

業種別では、主要7業種中5業種で前年を上回りました。

 

「サービス業」は249件(前年同月比15.8%増)で最多。5カ月連続で200件超えが続き、4月としては2000年以降で最多の水準です。なかでも経営コンサルタントを含む「専門サービス」が58件と2000年以降で最多となっており、専門サービス分野自体にも淘汰の波が押し寄せていることが分かります。

 

「建設業」は185件(同18.6%増)で3カ月連続前年超え。資材価格の高騰と慢性的な人手不足が続くなか、受注を確保しても採算が取れないという構造的な問題を抱える企業が限界に達しているケースが増えています。

 

後継者難倒産の急増:「経営者の病気・死亡」が過去最多

後継者難による倒産は61件(前年同月比32.6%増)となり、集計開始(2013年)以来2番目に多い水準に達しました。

 

特筆すべきは主因の内訳です。「経営者の病気・死亡」が39件で過去最多となっており、事業承継を計画的に進められないまま代表者が突然倒れ、そのまま廃業・倒産に至るケースが増えていることを示しています。

 

業歴「30年以上」の倒産が278件(前年同月比17.3%増)と3カ月連続増加しているのも、長年続いてきた企業が後継者問題を解決できないまま幕を閉じているという現実を反映していると見ることができます。

 

後継者問題はかねてより指摘されてきた課題ですが、「まだ先の話」として先送りしてきた結果が、今まさに倒産という数字に転化し始めています。

 

中小企業の資金繰り悪化を示すその他の指標

人手不足倒産:11カ月連続で30件超え

人手不足を主因とする倒産は33件(前年同月比2.9%減)で、11カ月連続で30件を上回っています。従業員10人未満の小規模企業が全体の78.8%を占めており、採用コストの増大と人材確保難が小規模事業者の経営を直撃している状況が続いています。

 

ゼロゼロ融資後倒産:ピークは過ぎたが油断は禁物

コロナ禍の無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)に関連した倒産は27件(前年同月59件・54.2%減)と、2カ月連続で前年を下回りました。返済本格化のピークはひとまず通過しつつあるようです。

 

ただし、問題の「形」が変わっただけという見方が適切です。物価高・人手不足・円安・長期金利上昇という別の経営圧力が既に次の波として押し寄せており、楽観は禁物です。

 

企業価値担保権(2026年5月施行)が中小企業の資金調達を変える

2026年5月25日、「事業性融資の推進等に関する法律」に基づき、企業価値担保権が施行されます。

 

これは、従来の不動産担保・経営者保証に依存しない新しい融資の枠組みです。将来のキャッシュフローや特許・ブランド・顧客基盤といった無形資産を含む事業全体を担保として資金調達ができるようになります。有形資産が乏しいスタートアップや、事業承継・事業再生の局面にある中小企業にとって有力な選択肢となりえます。

 

制度の実効性は、金融機関側の「目利き力」と企業側の「適切な情報開示」の両輪で成り立つものです。普及には一定の時間を要するとみられますが、中小企業の資金調達環境を大きく変え得る制度として、その活用動向を注視していきます。

 

事業再生コンサルタントからの視点:今、中小企業経営者が取るべき行動

今回の倒産データを総括すると、「物価高・コスト高の波が、中小・零細規模の企業を継続的に直撃している」という構図が鮮明です。

 

倒産に至る企業の多くには、ある共通点があります。「問題に気づいていたが、対応が遅れた」ということです。資金繰りの悪化は、多くの場合じわじわと進みます。最初は月末の支払いが少し苦しい、次第に金融機関への返済が滞り始め、やがて手の打ちようがなくなる──このサイクルに入る前に動けるかどうかが、再生と倒産の分岐点となります。

 

後継者問題も同様です。「自分がいなくなった後どうなるか」を考え、選択肢を整理しておく時間は、元気なうちにしか持てません。

 

・売上は維持しているが利益が出ない

・資金繰りが月を追うごとに苦しくなっている

・後継者が決まっておらず、将来が見えない

・金融機関との返済条件の見直しを検討している

 

こうした状況に一つでも心当たりがある場合は、早めに専門家への相談をご検討ください。

 

まとめ:2026年の倒産増加トレンドと今後の見通し

・2026年4月の企業倒産は899件、5カ月連続で前年超え・4月として過去10年最多

・物価高倒産が108件と集計開始以来初めて100件を突破(過去最多)

・後継者難倒産61件、「経営者の病気・死亡」主因が過去最多

・人手不足倒産は11カ月連続で30件超え

・ゼロゼロ融資後倒産は鎮静化傾向も、物価高・金利上昇という次の波が迫る

・5月25日施行の企業価値担保権が中小企業の資金調達に新たな選択肢をもたらす

 

原油・原材料コストの上昇、円安、金利負担増、人件費高騰と、中小企業を取り巻く経営環境は引き続き厳しい状況にあります。帝国データバンクも、2026年度は倒産が増加する可能性が高いと分析しており、「夏以降さらに急増する懸念がある」と指摘しています。

 

「気になっているが後回しにしていた」では間に合わなくなるケースが増えています。早期の対応が、選択肢の幅を広げます。

 

 

 

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池田ビジネスコンサルティング(代表 池田輝之)

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