経営コンサルタントコラム 2012年10月22日号

再生局面では手形に注意(3)

◆手形を振り出す場合の注意点

手形は現実の支払を「先延ばし」するものです。

手形記載の金額はその期日に支払うことになります。

つまり、手形取引であれば取引時点で手もとに現金が無くても商売ができるわけです。

 

うまく使えば、いい道具です。しかし、管理を怠るとまずい結果をもたらします。

なぜなら支払期日前日までに資金を用意できないと不渡りになるからです。

6か月以内に2回の不渡りを出すと倒産、ということになるのは以前お話した通りです。

ですので、1回目の不渡りでは銀行取引停止にはなりません。「不渡報告」が銀行に通知されるだけです。

また、1回目の不渡りから6か月以内に2回目の不渡りを起こさなければ、不渡りは「無かったこと」になります。

 

というとそんなに心配するようなことではない気もしますが、これがそうでもないのです。

なぜかというと、支払期日は月に1回でないこともあるからです。

 

5日にA会社へ振出している手形の支払期日があり、10日にB会社へ振出している手形の支払期日があるような場合、5日に不渡りを出し、10日の支払に資金が間に合わないと、6か月以内に2回目の不渡り、ということになります。

5日に資金が足りないところ、その5日後の10日に資金を用意することは容易ではありません。

 

◆不渡りを防ぐポイント

そもそも手形を振り出して支払う理由は、以下のようなところでした。

①手もとに現金資金が無い

②支払うに足りる現金資金が無い

③手もと資金を減らせない

 

要するにお金がない(足りない)わけですね。

ですので、次の決済日まで時間が無いと、資金を準備するのは大変困難になります。

 

当り前ですが、資金を準備できれば不渡りは起こりません。

ただ、準備する(不渡りを回避する)にしてもいろいろとやることがあり、時間が必要です。

そのためにも「いつ」「いくら」足りなくなる、ということをできるかぎり早く把握しておくことが重要になります。

言い換えれば資金管理、資金繰りをきちんとする、把握することが不渡りを防ぐ、倒産を防ぐポイントになります。

 

◆資金繰り管理の重要性

利益は出ているのに支払日当日に決済資金が調わず、不渡りを出し倒産となった場合、これをいわゆる「黒字倒産」といいます。

 

会社は赤字でも潰れませんが、キャッシュ(現預金)が無くなると即潰れるという意味がわかりますね。

ですので、手形を振出している会社はよくよく注意して管理をしなければなりません。

できれば資金繰りの管理を日々で追っておく(日繰りともいいます)ことをお勧めします。そうすれば、何日にいくら資金が必要で、いくら入金予定があって、そのときの資金がいくらでいくら足りないか、把握できますからね。

 

手形決済資金が足りなくても不渡りにしない方法はいくつかあります。ただそれも決済日直前に資金不足が判明したのでは打つ手がありません。時間切れです。

早めに分かれば、その分不渡りを回避する策を練り、打つことができます。

 

会社はキャッシュ(現預金)が無くなると倒産します。

倒産を防ぐために会社が先ず、しなければならないことは現金、資金の確保です。

そのためにも、支払を先延ばしできる手形は、有効な道具となります。

ただし、その用法には十分な注意が必要です。

資金繰りをきちんと把握して、キャッシュ不足を回避しましょう。

 

池田

 

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