事業再生コンサルタントの中小企業経営コラム

再生局面では手形に注意(5)

手形割引とは、受け取った手形を銀行や手形割引業者に持っていき、現金化することをいいます。手形は支払の繰延べ効果がありますので、逆に受け取った場合は現金化までに4か月程度待たなければならないことは前回お話した通りです。現金化までの期間が待てない場合に手形割引をするわけです。

 

当座の口座を持っていない(手形を振り出せない)会社が売上代金を手形で受け取ったが支払は現金である場合など、入出金のピッチがあっていない場合に使われます。つまりは手もと資金が足りない場合です。

 

しかし、割引いてもらった場合には、割引料や事務手数料、取立手数用などの手数料が掛かります。ですので、実際に手形を現金化して手許に残るのは、上記の費用を差引後の金額になります。割引料率は手形の信用度が高いものほど低く、信用度が低いものほど高くなります。

 

 

ここで注意して欲しいのが、もし割引いた手形が不渡りや信用が毀損したような場合、その手形を買い戻さなければならないこと。売り切って終わり、というわけではないので裏書譲渡類似ですね。実際に裏書で割引をやっている割引業者さんもいます。買戻しの確実性を担保するため、銀行などでは定期預金担保や不動産への抵当権設定を求められる場合もあります。

手形割引と自社利益率の関係

 

 

あと考えなければならないのが割引料等、手形割引に要する費用です。

 

そもそも手形は、売上の代金として受け取ります。ここから割引料等を引かれるということは、その分利益が減ることを意味しているのはなんとなくわかりますね。仮に、税引後の利益率が3%だったとしましょう。例をあげると、

 

売 上 1000万円

原 価 800万円(原価率80%)

粗利益 200万円(粗利率20%)

販管費 150万円(販管費率15%)

営業利益  50万円(営業利益率5%)

営業外   0万円

経常利益  50万円(経常利益率5%)

特 別   0万円

税前利益  50万円(売上高対税前利益比率5%)

法人税等  20万円(税率40%)

税後利益  30万円(売上高対税後利益費率3%)

 

とこんな会社があったとします。

 

売上が1000万円で原価が800万円、販管費が150万円で営業外や特別の損益が無いので、手もとに残ったお金は50万円。法人税率が40%として、税引き後に残るお金は30万円。なかなか優秀な会社さんだと思います。

 

さて、この売上で支払いを受けた手形1000万円を割引に出したとします。割引料等掛かる費用が5%とすると、受け取る現金は950万円になりますね。

 

(手形額面)1000万円-(割引料等)50万円=(受け取る額)950万円

 

ここで先ほどのP/L(損益)に戻ってみましょう。掛かった割引料を営業外の部分に入れて計算し直すと、

 

売 上 1000万円

原 価 800万円(原価率80%)

粗利益 200万円(粗利率20%)

販管費 150万円(販管費率15%)

営業利益  50万円

営業外   50万円

経常利益  0万円

特 別   0万円

税前利益  0万円

法人税等  0万円

税後利益  0万円

 

なんと利益が0万円です。割引いて早期に現金化したため、1000万円は儲からない売上になってしまいました。

 

このように、手形を割り引くということは、手持ち現金(キャッシュ)を増やせる代わりに、利益を減ずるものであるということを忘れてはいけません。手もとに残る利益を割引料という形で“フイ”にして、キャッシュを得ているわけです。

 

ちなみに割引料等が5%(かなり信用度の高い会社の手形ですね)ですと、売上高に対する税前利益率が3%(なかなか優秀です)の会社でも2%の逆ザヤです。つまりは“損”です。15%などで割ったら、大損です。1000万円の仕事をして30万円手もとに残るはずが、逆に120万円の持ち出しになってしまいます。

 

どうしても手もと資金が必要な場合以外、手形割引は行うべきでないのは明らかですね。きちんと資金繰り表を作って、なるべく厄介にならないようにしたいものです。

 

池田

 

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